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大丈夫だと囁かれながら、あり得ない場所に挿しこまれた指の動きにバージルはひたすら耐えていた。
逃れようにも半ばのし掛かられ肩を抱かれている状況では目の前の胸にしがみついていることしかできない。
さらに初めて意識したダンテの欲望が硬さを増して太もものあたりに当たっているのがどうしようもなく気になりバージルを緊張させる。
「痛いか?」
ダンテが顔を覗き込むようにして問いかけてきた。
まともに目を合わせられないバージルは顔を隠すように視線を逸らせ小さく首を振る。
痛みはない。
ただゆっくりと抜き挿しされ時おり中で動かされるその名指しがたい感覚が不安でたまらなかった。
そして何よりも耐え難いのは不浄な部分に触れられているという羞恥心だ。
なぜこんな行為をしたがるのか、バージルにはとても理解することができなかった。
指が動くたびに聞こえてくるとろりとした蜜の音もひどく卑猥なものに思える。
それが羞恥心を煽るのかそれとも酔いが回ってきたのか頬が異様に熱く感じられた。
けれど同時に解されてくるその部分にこれまでとは違う感覚が生まれ始めていることにもバージルは気づかざるをえなかった。
それはじくじくとするようなむず痒さで、秘所の縁を指が擦っていくたびにその感覚を追って腰が動いてしまいそうになる。
やや力を失っていたバージルの欲望も再び熱を湛えるように起立していった。
その反応に気付いたらしいダンテは動きを早め、さらに蜜をすくっては指を増やしていく。
「んっ、ダンテ……」
「痛かったか?」
「ちが……、も、やだ」
初めて触れられるそんな場所から不快感以外の何かを感じとっていることが怖かった。
しかし意識とは裏腹に身体がそれを知りたがり求めようとしている。
「我慢するな、感じてきてるんじゃないのか?」
違うと大きく首を振ってはみるが頭をもたげているそれは誤魔化しようもない。
むず痒さは焦れったさを伴ってバージルの身体に染み込み始めている。
ゆっくりと探られていくうちに柔らかくなった秘所は熱を孕み蜜をとろかし、まるでダンテの指にまとわりつくように吸いついていった。
「ぁ……っ!?」
ふいに背筋を伝った快感にバージルが思わず声を上げてしまったのはそれからしばらくたってからのことだった。
「な……やっ、ダンテ……っ」
わけが分からず逃げ出そうとするのを無視してダンテはそこを擦り上げていく。
慌てて声を抑え始めたバージルだったが息遣いが荒くなっていくのだけは止めようもない。
指の根元に擦られる縁の焦れったさと指先に押し上げられる中の快感が繋がりバージルの襞が震え始めた。
それはもう意思でどうにかできるものではなくなっている。
「ダンテ……ダンテ……」
ぎゅっと目を閉じ唇を噛み、その隙間から零れる声はまるで苦痛を訴えているようだった。
けれど身体を見ればバージルの全身を満たし始めているのが快感なのだということは明白で、それを確信したダンテは執拗なほどにその一点を摺り撫で上げていく。
引き攣る喉から漏れるのは拒絶と否定の言葉ばかりだったがその全てが甘い色に覆われていた。
「我慢するな、その方が楽だろう」
耳元で吐息混じりに囁かれてもまだ十分に残っている理性がそれを否定する。
それでもいやがおうにも昂っていく身体は既に限界を超えそうなところまできていた。
ダンテの胸に額を押し付けるようにして耐えるバージルもそれを分かっているのだろう、もう嫌だと言うこともなくただ熱い息を吐き出しながら無意識のうちにその腰を揺らし始めた。
快感に呑まれつつある中でそれまでの否定の言葉さえ抑えてしまったのはこれ以上声を出したくないという最後の理性だった。
懸命に声を抑え顔を隠し、それでもその瞬間だけは喉の奥でくっとくぐもった悲鳴を上げたバージルは一気に力を失ってダンテの腕の中でくたりとする。
その間にも続く快感に身体を震わせるバージルの背中に宥めるように手を置いて、ダンテはいまだまとわりついてくる襞の中からそっと指を抜き去った。
「んっ」
慣れない感覚に甘い声が上がる。
そうしてやや強引に頬を捉えたダンテはすっかり潤んでいた瞳に口付を落とした。
初めてのことに精神的にも動揺していたバージルは疲れ果てたかのようにダンテのされるがままになっている。
まだ収まりきらない息遣いのまま、目から鼻、そして唇へと移っていく口付けをただ大人しく受けているだけだった。
「バージル」
しばらくして間近で語りかけてくるような真剣な声にバージルは目を上げる。
「今度は少し辛いぞ」
同時にダンテのスラックスを脱ぐ気配に気づき、それまで焦点が合わずぼんやりとしていた瞳が僅かに見開かれた。
さきほど言われたことを思い出し不安の色が広がる。
「もう嫌だ……無理……」
けれどそれ以上言わせないかのように唇を塞いだダンテは再びそこに指を伸ばしていった。
「んーっ!」
身を捩っても唇を避けることはできず、バージルはこもった悲鳴で抗議をする。
しかしさっきの行為の中でバージルが少なからず感じ始めていたことを知ったダンテは躊躇うことなく膝を開かせその間に身を割り込ませた。
唇を合わせながら秘所を探り、いまだとろける蜜に溢れているそこを確認するようにゆっくりと自身を押し当てる。
「……っ!」
全身を竦め緊張させたせいでバージルのそこは侵入を拒むようにきゅっと窄まり震えた。
それでも無理やりに入ってくる熱に鋭い痛みを感じる。
「んっ、ん……、ふっ……あぁぁ!」
やっと唇が離されたと思った瞬間、腰をしっかりと掴んだダンテが一気にバージルの中に押し入ってきた。
身体中の全てのものが押し上げられるほどの圧迫感に息が詰まる。
悲鳴さえ上げることができなくなったバージルはぎゅっとシーツを掴み、それ以上の動きを封じるかのように両足でダンテの身体を挟み込んだ。
収まらない痛みと混乱の中で浅い息を繰り返しながら、その眉根は痛々しいほどに歪められ唇は色を失うまでに噛み締められている。
「バージル」
ダンテの声を拒否するように首を振り、顔を隠そうとする手をどかせて紅潮する両頬を捉えた。
「バージル……バージル!」
強引に自分の方を向かせて幾度も名前を呼ぶ。
やがて薄らと開かれた瞳にはいっぱいの涙が浮かんでいた。
一度瞬きをしただけでそれは溢れてこめかみを伝いシーツへと吸い込まれていく。
「落ち着け、バージル」
「やだ……も、や……」
弱々しく呟きながらバージルは子どものように涙を零す。
その涙を指先で拭いながらダンテはひたすら囁きかけた。
「バージル、俺を見ろ。バージル」
「ダ……テ」
「ゆっくり息をして、落ち着け。……分るな?」
けれど自分に伸ばされている腕をぎゅっと握りバージルは首を振る。
「どうして、こんな……こと……っ、もうやだ……」
「バージル」
「どうしてっ」
再び溢れる涙に喉を詰まらせるような悲痛な声だった。
「愛してるから」
それに答えるダンテの声も辛い色を帯びている。
「分らな……そんなの、分らない」
「大丈夫だ、ゆっくり息をして、バージル。力を抜け」
「や……」
泣きじゃくる子どもを宥めるようにダンテは髪を梳き囁き続けてバージルが落ち着くのを待った。
そうされるうちバージルも次第にどうすれば身体が楽になるのか気づいたのだろう、時おり喉を引きつかせながらも呼吸を深くしようと意識し始める。
「そうだ、バージル。……いい子だ」
「ダンテ」
涙に潤んだ瞳が縋りつくように見つめてきた。
けれどまだ自由の効かない身体はふいに緊張してはダンテを締め付けてしまう。
「……っ」
「ダンテ?」
「ん?」
「ダンテも……痛いの?」
眉根を寄せるダンテの表情にバージルは不安の色を滲ませた。
思わず苦笑したダンテはそのまま思いきり抱きしめたい衝動に駆られたものの、今身体を動かして辛いのはバージルなのだとぐっと堪える。
「いや、よすぎるんだ」
「…………」
「お前の中が気持ち良すぎて困ってるんだ。……くっ」
「あ……っ」
ダンテの言葉に羞恥を感じた途端、バージルの中の襞が蠢きまとわりついた。
締め付けてしまうことで余計にダンテの存在を感じとってしまったバージルも小さく呻いて身体を震わせる。
けれど気がついてみれば、あれほど激しかった痛みがいつの間にか馴染むように薄らいでいた。
呼吸も随分と楽にできるようになっている。
「バージル」
薄らと開いている唇にダンテが親指を滑らせてきた。
「分らなくてもいい」
何を? と問いたげな瞳が見つめ返す。
ダンテはできるだけ繋がっている部分が動かないようにゆっくりと顔を寄せて口付けを落とした。
「俺がお前を愛してると、それだけ覚えておけばいい」
「ダンテ……」
「だからどうしてもお前が欲しかった。……いや、というよりは俺を刻みつけておきたかった」
真摯な表情で紡がれるその言葉と強烈すぎる行為の落差を理解しかねているバージルではあったが、今受けている口付けは不安に固まっていた気持ちを溶かすには十分すぎるほどに優しいものだった。
「もう大丈夫か?」
触れ合わせるだけの口付けにバージルの唇が応え始めた頃、ダンテはその瞳を覗き込むようにして訊ねてきた。
大丈夫と答えたらどうなってしまうのかと視線を伏せるが、ダンテはそんなバージルの迷いを無視して一度だけほんの弱くではあるが腰を付き上げる。
「んっ!」
再び全身に緊張が走ったもののやはり過度の痛みは感じない。
それでも不安を滲ませた瞳にダンテは動くぞと伝えてバージルの腰に手をかけた。
ゆっくりとした小さな動きにもバージルは息を詰めて眉を顰め、耐えるような表情でダンテを締め付けてくる。
やっと落ち着いたと思った身体はあっという間に緊張に包まれていった。
けれどさっきと違うのはそこに痛み以外のものを見出していたことだ。
それは最初に指を挿し入れられたときの疼くような焦れったいもので、今では薄らいだ痛みとない交ぜになりバージルの背筋を震わせる。
「ダンテ……」
明らかに甘さの混じった声と戸惑うような表情を見て取ったダンテが口元に僅かな笑みを浮かべた。
小刻みな動きを速めていけば次第に彼を迎え入れる襞が震えながらまとわりついてくるようになる。
バージルも明らかに快感を覚えつつあった。
緩やかではあるものの繰り返される動きに合わせて呻き声が漏れ吐息が熱く湿っていく。
湧き上がってくる快感が強くなるにつれどこか心もとないものを感じてバージルは腕を伸ばした。
けれどしがみつくにはダンテの胸は遠すぎる。
「ダンテ」
自分でもどうすればいいのか分からずなんとかしてほしくて、けれど言葉にするには羞恥心が邪魔をしていた。
腰に当てられていた腕をぎゅっと掴む。
ダンテは一度動きを止め見つめ返すとその背中に手を入れてバージルを抱き起してやった。
「あぁっ!」
それまで浅くしか侵入していなかったダンテのものがバージルの体重を受けて一気に奥まで押し込まれる。
「う……ぁ……」
僅かに腰を上げダンテにしがみつきながらその首に頬を埋めると「大丈夫か」と囁く声が耳元に響いた。
「ん……」
腰を上げるために不自然な力を込めているせいかバージルの腿が小さく震えている。
それを宥めるようにゆっくりと撫でながらダンテはその後ろ、バージルの受け入れている部分に指先を伸ばした。
「やっ」
そこをなぞられるだけで軽い痺れに似たものが指先にまで広がっていく。
「ここが感じるのか?」
しかしバージルは強く首を振って答えようとはしない。
「バージル、隠しても分るんだ。こうして繋がってればな」
「ぁ……くっ!」
いきなり突き上げられた衝撃にバージルは息を呑んで身体を硬くした。
「つかまってろ」
その衝撃が抜けきらないうちにダンテはゆっくりとではあるが幾度もバージルの腰を押さえながら突き上げる。
深くまで突かれながら腰を持ち上げられまた落とされる。
その途中、あの敏感な場所を一緒に擦られるたびにバージルは喉の奥で小さな悲鳴を上げた。
僅かな痛みも感じるが今はそれさえも快感の一部となって身体の中に溜まっていく。
「ダンテ……からだ、あつい……」
「ワインが効いたか?」
「わからな……っ、ん、んっ」
相変わらずダンテの首にしがみついたまま、すかっり快感に捉われているもののそれでも声を漏らすまいと目の前の肌に唇を押しつける。
言葉の通りワインの酔いも手伝ってか、ダンテを呑みこんでいる中はそれまでとは比べ物にならないほどに熱を持ち、首筋や背中にも薄らと汗を浮かべていた。
「ダンテ……や、も……」
「どうした?」
動きを止めることなくダンテはバージルの胸に唇をつけた。
その先端に舌を這わせると途端に襞が反応してダンテをよりいっそう締め付けてくる。
尖らせた舌で嬲り続けていけば喉の奥に小さな悲鳴を上げながら焦れるように腰を揺らし始めた。
「ダンテ……ダンテっ」
やがて切羽詰まったように声を上ずらせてバージルはダンテの腕を掴んでくる。
感じる快感があまりに強すぎて、けれど全てを吐き出すにはまだ何かが足りない。
突かれるたびに蜜を流しながら震える欲望も、時おりダンテの腹に擦りつけられるだけでは却って中途半端にこもる熱を煽るだけだった。
「もう……や、ダンテ……」
助けを求めるようにバージルの唇で幾度も繰り返される名前がダンテの心に充足感を与えていく。
「バージル」
ほんの少しバージルの身体を離して唇を捉えた。
触れ合った唇はすぐに深く交わり舌を絡ませ合う。
「愛してる」
間近な瞳に告げるとバージルの全身が反応を示した。
それでもどうしていいのか分からないバージルは自分と同じ青い瞳を見つめ返す。
ダンテも既にそんなバージルの状態に気付いていた。
「あぁ……っ!」
ふいに望んでいた所に触れてきた指にバージルは堪える間もなく嬌声を上げる。
同時に摺り上げるように奥まで突き入れられて背筋を仰け反らせた。
「やっ、あ、あ……ぅっ」
二つの快感に苛まれ、一度零れた始めた声はもう抑えることができなくなっている。
張りつめたダンテの欲望も遠慮をなくし、ぎりぎりまで引いては一気に挿し入れバージルを追い詰めていった。
熱い息遣いと甘く切羽詰まった声、二人の交わりから奏でられる淫らな音が室内に響き身体の熱をも上げていく。
「いやだっ、も……やっ……!」
けれどそんな中でそれまで快感に溺れていたはずのバージルがふいにダンテの肩を掴み腕を突っぱねた。
激しく首を振っては嫌だと繰り返す。
「どうした」
ダンテの声にも快感が滲み掠れ始めていた。
「もう、いい……っ、やめてくれ!」
「バージル」
「いやだ……助けて、こわ……」
喘ぐ声は泣き声のように震え最後の言葉はほとんど聞き取れないほどだった。
ダンテの側から離れようともがきながら、しかしその内側は放したくないというほどに絡みつき締め上げている。
反する行為はどちらもバージルの本音だった。
自分を変えてしまいそうなほどの強い快感への不安とそんな快感を貪りたいという欲求。
どちらも選べないバージルは混乱の中でひたすらダンテに助けを求めていた。
そんなバージルを強く抱きよせたダンテは今まで以上に激しくその奥を突き上げ始めた。
手の中に捉えている欲望へもさらなる愛撫が加えられバージルの全身が震え出す。
「だ……っ、やめ! くぅ……あぁっ!」
「バージル、……っ 感じるだろ」
「ダンテ、ダンテ……」
ついさっきまで離れようとしていたのが嘘のように、バージルは大きな背中に腕を回ししがみついていった。
「それでいい、もうすぐ……だろ」
その言葉の意味を理解しているのか、こくこくと頷きながらダンテ、ダンテとその名を繰り返す。
熱く吐き出される息遣いの中で、もはや意味をなしているのは「ダンテ」だけだった。
ほどなくして絶頂を迎えたバージルは息を詰め言葉を呑みこみ、けれどその一瞬だけ悲痛とも聞こえる声でダンテの名を呼んだ。
二人の胸に快楽の証が飛び散ったと同時にバージルの襞はこれまでにないほど強くダンテを捉え絡みつき貪るように蠢く。
熱を吐き出しきって、それでも続く快感に苦痛のような表情を浮かべているバージルを抱きしめながらダンテもその中にありったけの想いを放っていた。
荒い息を残しながらもすっかり力の抜けてしまったバージルはダンテの髪に頬を埋めるようにして快感の余韻に浸っていた。
ダンテもまたバージルを抱きしめたままゆっくりとその背中をさすり、時おり悪戯のように目の前の胸に唇を落とす。
そのたびにダンテを収めたままのそこは緩やかな快感に同調するようにひくりと動いてはダンテを楽しませた。
「バージル、腰を上げて」
躊躇いながらも促されるままにするとダンテがゆっくりと腰を引きバージルの中から出ていった。
「んっ」
引きずられるような感触とその後の虚しさに思わず甘い声が漏れる。
そんなバージルを抱きしめたままダンテはベッドに横たわり軽い口付けをした。
それから言葉もなくただ唇を触れ合わせ髪を梳き背中を抱いて過ごす時間は、少し前までの濃密な時間が幻だったかのように穏やかで静かに過ぎていく。
けれどここにきて再び羞恥心が起こったのか、バージルは一切視線を合わせようとはしなかったがそれさえもダンテにとっては愛しさを募らせる行為でしかなかった。
「風呂の用意をさせよう」
最後にちゅ、と額に唇を落としたダンテが半身を起こすとバージルがじっと見つめてくる。
やっと視線を合わせてきたバージルの手を取って、すぐに戻るとその指先に口付をしてダンテはベッドを降りた。
残されたバージルはぼんやりと窓の外を見る。
空は茜色を過ぎて既に紺色に覆われ始めていた。
言葉の通り、すぐに戻ってきたダンテは再びベッドに潜り込むとバージルを抱き寄せる。
暖かい胸に頬を寄せ目を閉じるとそれだけで身体がふわりと浮かぶような睡魔に捉われた。
「ダンテ……」
何を言うでもなくただそう呟いて、バージルはゆっくりと深い眠りに落ちていく。
そんなバージルを見つめながら、ダンテは少し汗に湿ったその髪に指を差し入れ柔らかい感触をいつまでもゆっくりと楽しんでいた。
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2009/09/30
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