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薄らと目を明けたバージルが最初に気付いたのは遠くから聞こえる水の跳ねる音だった。
ぼんやりとする頭で周囲を見回すが暗闇に目が慣れないせいかほとんど何も見ることができない。
大きな窓からも月明かりがほとんど入っていないのを見て今夜は新月だったことを思い出した。
「バージル」
ふいに耳元に暖かい吐息を感じて身体を竦ませる。
すぐ隣にダンテがいた。
途端にさっきまでのことを思い出して羞恥心が溢れてくる。
次第に闇に慣れてきた目がじっと見つめてくるダンテの表情を捉えた。
が、見つめ返すことができずふと視線を逸らせてしまう。
「大丈夫か?」
おそらくは身体のことを気遣っているだろう言葉にバージルの羞恥は余計に募り、自分でも大丈夫なのかどうか分らないままに顔を伏せて小さく頷いてしまった。
無言の時間が続き、その間もずっと水の音が聞こえてくる。
ああ、そうかと、バージルはダンテが風呂の用意をさせると言っていたことを思い出した。
使用人たちが隣の部屋にある浴槽に湯を入れているのだろう。
水の跳ねる音が耳に心地よく響いてきて、バージルは目を閉じてそれに聞き入っていた。
そうしているとさっきまでのことがまるで夢だったかのように思えてくる。
あれほど熱かった身体もすっかり熱を失っていた。
今はただ、誰かと身体を交えるという行為の満ち足りた感覚とそれを知ってしまったことへの喪失感のようなものが胸の奥にゆったりと沈んでいる。
新しいことを知ってこんなに戸惑うなどバージルにとっては初めてのことだった。
「バージル」
軽く肩を揺すられてバージルはふっと目を覚ました。
いつの間にかまたうとうとしていたらしい。
闇に慣れた目はそのままのようで見慣れたローブを着たダンテがベッドの端に腰かけているのが見えた。
「起きられるか?」
言われるままに半身を起そうとしたものの、途端にダンテを受け入れていた場所に痛みを感じて小さく呻いてしまった。
それを見たダンテは「肩につかまれ」と言いながらバージルを抱きあげベッドを後にする。
本当なら下せと抵抗したいところだったがさすがに今はそんな言葉は出てこなかった。
隣の部屋には灯りが備えられ室内をオレンジ色に映し出している。
そこにある浴槽にゆっくりと下ろされ身体が暖かい湯に包まれるとバージルは思わず安堵の溜息をついてしまった。
強張っていた全身が一気に緩んでいく。
けれど薄暗い灯りの下とはいえ、裸体を晒していることに抵抗を感じたバージルは膝を抱き寄せ身体を縮めた。
「少しゆっくりしていろ」
そう言ってダンテはバージルの頭のてっぺんに口付けを残して壁に備え付けられているリネンの方へと向かう。
そこから新しいシーツを手に隣の寝室へ戻ろうとするのを見てバージルは慌てて声をかけた。
「ダンテ、何をして……」
「ん? シーツを変えないと寝られないだろう」
当たり前だと言わんばかりに手にしたそれを軽く掲げてみせる。
「そんなことは俺がやる!」
浴槽の縁に手をかけて立ち上がろうとするが、やはり痛みに襲われ一瞬息が詰まった。
「いいからそこにいろ。今は大人しく面倒見られておけ」
少し呆れたように、けれど楽しそうにそう言ってダンテは寝室へと戻っていく。
落ち着かない思いでそれを見送ったバージルだが、今はダンテの言う通り大人しくしているしかできなかった。
浴槽に背中を預け足を伸ばす。
少し俯いた瞬間、胸や腹部に赤黒いものを見つけてぎょっとした。
いつの間にこんなものをつけられていたのかと思い返すが、脳裏を過るのは自分の痴態ばかりだ。
もう考えるのはやめようと、バージルは再び膝を抱き寄せて身体を丸めた。
やがて戻ってきたダンテが浴槽の側に膝をつきバージルの顔を覗き込んでくる。
はっと顔を上げたバージルに軽く口付けをするとダンテは湯に手を入れてバージルの腿の内側あたりを撫で上げていった。
「ダンテ!」
慌てて脚を閉じるがダンテの手はゆっくりと腿から腹、胸を彷徨っていく。
「大人しくしていろ、身体を洗うために風呂の用意をしたんだろう?」
「そんなの自分でできる」
「そうか? ここも?」
腰のあたりに落ちていた手が背後に潜り込んで秘所に触れた。
「……っ、そんなとこ……もういい!」
焦って腰を引こうとするが狭い浴槽の中ではどうしようもない。
「バージル、洗うだけだ。何もしない」
「…………」
視線を伏せてなおかつダンテに顔を背けて、バージルはぎゅっと閉じていた脚を僅かに緩めた。
ゆっくりと入ってくる指の感覚に身体中がざわつき出す。
無意識に締め付けてしまうのを止められず、バージルは小さく呻いて浴槽の縁を掴んだ。
差し入れられ中で小さく曲げられれば勝手に襞が反応して、既に消えてしまったと思っていた熱が身体の奥で疼き始める。
洗うだけと言ってはいたが、その行為とさっきの快感を引き出す行為に違いは全くないようだ。
痛みも感じはするが再び湧き上がってくる快感から気を逸らせるにはあまりにも弱すぎた。
「感じてきたか?」
見透かされたような言葉に身体が竦み、あまりの情けなさに自己嫌悪に陥る。
それでも違うと首を振るバージルの肩に手を回してダンテはその耳元に唇を寄せた。
「気持ちいいなら素直にしてればいい。その方が可愛いぞ」
「ダンテ!」
あまりに恥ずかしい言葉にかっとなって睨みつけるが途端に中の指をくいと曲げられ息が詰まった。
「それにもう硬くなってる」
指を動かすついでとばかりに熱くなっているその根元をさすられバージルの身体が派手に震えた。
それが伝わりぱしゃりと跳ねた湯が小波を作る。
「ダンテ……っ」
「ん?」
呑気な声で答えながらもその指に止まる気配はない。
「やだ……」
指から逃げるように身体をよじるもそれは却って腰を揺らしてさらに誘い込んでいるようにしかダンテには見えなかった。
「大丈夫だ、バージル」
ぎゅっと肩を抱き寄せられ肌触りのいいローブにバージルの頬が触れた。
快感を覚えて熱く柔らかくなった襞が指にまとわりついては蠢きひくつく。
懸命に唇を噛んでいるバージルは既に観念したようにローブに額を擦りつけその胸元をぎゅっと掴んだ。
時に抑えた悲鳴を上げながら、もたらされる快感に身体中の熱が上がり指の先まで浸食されていく。
「ダンテっ!」
急速に昂るものを抑えることができず、バージルは呆気なく果ててぐったりと浴槽の中に沈み込みそうになった。
「おっと」
慌てたダンテに支えられ沈むのは逃れたものの、軽い眩暈と耳鳴りに喉はからからで何も言うことができない。
「バージル」
すぐ耳元で聞こえているはずの声がひどく遠くに響いているように感じた。
「あつい……」
さっきは緊張を解いてくれた湯だったが今はその温かさが不快で堪らない。
ざばりと湯から引き揚げられるとほっとしたようにその頬をダンテの胸に預けて、バージルは荒い吐息を繰り返した。
ベッドに横たえられるとひんやりとしたシーツが全身にあたりひどく心地よかった。
「大丈夫か?」
そう聞かれるのは何度めだろうと思いながら、バージルは返事を返すこともできずその身体を投げ出していた。
もはや身体を隠そうという気力も出てこない。
「みず……ほしい」
それだけ言うのが精いっぱいだった。
やがて抱き起こされバージルがゆっくり瞳を開けると目の前にはグラスが差し出されていた。
背中全体に当たる肌ざわりのよさはダンテの着ているローブのものだと分る。
「飲めるか?」
弱々しく頷きグラスに手をかけて一口含むとほっとしたような吐息が漏れた。
「まだ酔いが残っていたのか?」
「わからない」
水を飲んで少し落ち着いたバージルはそのままダンテに背中を預けていく。
「少し……眠い」
「ああ」
ぎゅっと抱きしめられ少し冷たい指が頬を幾度も撫でていく。
本当はもう少し水が飲みたいと思いながらも、バージルはダンテの胸に抱かれたまま目を閉じた。
次に目を覚ましたとき室内はカーテンが閉めきられているもののほんのりとした明るさに満ちていた。
ゆっくりと起き上がって視線を落としてみればダンテが隣で寝入っている。
バージルはその寝顔をまじまじと見つめてみた。
銀色の髪が額と目を隠し薄らと開いた唇はその表情をあまりにも無防備に見せている。
数年間を従者として近くで過ごしてきたが寝顔を見るのは初めてだった。
思えば昨日、蔵書室に足を踏み入れてからというもの、それまでとはまったく違った時間の流れと出来事に戸惑うばかりだ。
今の時間を知ることはできないが、カーテンが閉められているのに室内がこれほど明るいということはすでに昼に近いのかもしれない。
そんな時間に自分がベッドにいるなどあり得ない。
ましてやダンテと一緒にだ。
けれど、そのダンテも近いうちに屋敷を出て行ってしまう。
彼のいない生活を想像してみるが全くその光景は浮かんでこないし、やはりそんな生活自体がバージルにとってはあり得ないものだった。
しかしそれが現実として目の前に迫っている。
じっと見つめているとダンテの睫毛が僅かに震えた。
やがて瞼が開き青い瞳がぼんやりとバージルに向けられる。
焦点が定まらないのか幾度か瞬きをしたダンテは、それでもバージルを認識して口元を小さく綻ばせながら「おはよう」と呟いた。
その途端、ふいに胸が痛みおはようと口から出かけた言葉を呑み込む。
「どうした?」
そんな様子に気づいたのか、ダンテは手を伸ばしてバージルの頬に触れてきた。
それには答えず二、三度首を振ったバージルはダンテの首に抱きつくようにしてその胸に頭を乗せる。
すぐに抱きしめられ髪を梳かれて、一瞬昂った気持ちが不思議なほどにすっと落ち着いた。
「お前から抱きついてくるのは随分と久しぶりだな」
起き抜けの少し掠れた声に、そういえばいつ以来だろうと思う。
小さい頃はよくこうして抱きついていったのに、屋敷で働くようになってからはダンテに引き寄せられることはあってもバージルからそれを望んだことはなかったかもしれない。
「いつ出ていくの」
「そうだな……いつにするか」
ダンテのあまり気乗りのしない声音に少しほっとする。
「でもお前は今夜にでも戻らないとな」
「…………」
ダンテの即興の嘘だったがそういつまでも屋敷を空けておくことはバージルにもできない。
胸を掴まれる思いで顔を上げたバージルは一瞬ダンテを見つめ、その唇にそっと自分のそれを重ねた。
少し顔を離して見下ろすとダンテは驚いたように見つめ返してくる。
それから幾度か唇を合わせているうちに髪を梳いていたダンテの手はゆっくりと背筋から腰のあたりへと彷徨っていった。
甘やかすように髪をいじっていた時とは全く違う、まるで熱を煽ってくるような手の動きに覚えてしまった快感への期待がバージルの身体の奥で疼き始める。
「ん……」
舌を差し入れれば待ち構えたようにダンテが応え、腰を辿っていた手は尻を撫でまわしていく。
一気に感情に火がついたようだった。
常に付きまとっていた羞恥は鳴りを潜め、今はダンテを求める気持ちばかりがバージルを追いたてる。
「んっ」
伸ばされていた手が挟間に潜りゆっくりと差し込まれた。
遠慮もなく奥まで突き入れられ戻される。
その繰り返しにバージルは低く呻いて僅かに腰を揺らした。
「ダンテ……」
快感を引き出そうとする躊躇いのない指の動きに、堪らず唇を離したバージルはダンテに縋りつくようにその首に鼻先を埋める。
その間にも与えられる刺激に、焦れたように腰を擦りつけ互いの腹で互いの欲望を高めていく。
「ダンテ……、ダンテ……」
上ずる切なげな声にダンテは指の動きを早めていった。
「朝から誘うなんて、悪い子だな」
「はぅ……っ、あ、あ……っ」
すっかり場所を覚えてしまったダンテの指がその一点を執拗に擦り上げる。
びくびくと跳ねるように腰を震わせるバージルはそんなダンテの言葉を否定するかのように首を振るが、羞恥を感じるはずの言葉もすべて今は快感へと繋がっていた。
「バージル、腰を上げて」
両手で腰の両脇を支えられ、バージルは言われるがままにしがみついていた半身を起し少し腰を浮かせた。
指が引き抜かれ、代わりにダンテの起立したものが当てがわれる。
「そのまま入れてごらん」
「や、むり……」
「大丈夫、できる」
ぬめりをともなった先端にそこを弄られバージルは息を詰める。
「腰を落とすだけだ」
「ん……」
ダンテの腹に手をついて躊躇いながらも腰を沈めていけば、既に解され熱を持ったそこは容易にダンテを呑みこんでいく。
「……っ、あぁ……っ」
「熱いな」
大きく息をつくダンテの声が掠れていた。
「自分のいいところは分るな」
「な、に……?」
「そのまま動いて、お前のいいように」
ダンテの言葉にバージルは助けを求めるようにその瞳を見つめる。
「そんな、できな……っ」
促すように軽く腰を突き上げられるがバージルはぎゅっと目を閉じて首を振ることしかできない。
「ダンテ……」
じっと見上げてくるダンテに縋るような思いでその両腕を掴む。
眉根は寄せられ熱に浮かされたような瞳が必死になんとかしてほしいと訴えていた。
結局、小さな吐息とともに苦笑したダンテは半身を起してバージルを抱きしめてやる。
「ダンテ」
ほっとしたような声でダンテの頭を掻き抱きバージルはその髪に唇を埋めた。
「バージルはこの恰好が好きなのか?」
少し視線を上げて胸の一点を吸い上げると、まるでそれに答えるかのようにびくりと襞が震えダンテにまとわりつく。
初めてだった昨日とは違い、今は素直に快感を受け入れようとしているバージルが昇り詰めていくのはすぐだった。
さすがに捨てきれない理性が多少の声を抑えさせてはいたが、熱い息とともに紡がれる嬌声は十分にダンテを楽しませ昂ぶらせる。
バージルもそんな自分自身の声を興奮に変えダンテにしがみつきながら腰を揺らした。
「ダンテ、もう……ダンテ!」
「イきそうか」
「ん……」
こくこくと頷いて早くとせがむように、バージルの身体はダンテを締め付けさらに奥へと誘い込む。
「一緒に、いくか?」
両頬を強く捉えられ視線が合った。
見上げてくる瞳は欲に濡れていながらもひどく真剣な色を帯びている。
「……いきたい」
消え入るような声で答えた途端、ダンテが激しく突き上げてきた。
「あぁっ! や、あ、んぁ……っ」
「く……っ」
しっかりと腰を抑えられ揺すられながらバージルは惜しげもなくダンテにその身体を晒し声を上げた。
「ダンテ……」
喘ぐ間にも息荒く、けれど切なげな声で呼ばれる名前にダンテの動きが激しさを増す。
「バージル、一緒に……バージル」
「ん、いきたい……ダンテ、一緒にいきたい」
快感に耐えきれなくなったのか閉じられた瞳から涙が零れ落ちた。
それに気づきながらも既に余裕のなくなっていたダンテはバージルを追い詰めるように、二人の間で濡れて震える熱に手をかける。
身体ばかりか心までもがダンテで満たされる感覚に、バージルは全てを手放すかのような錯覚に陥りながら快感を極めていった。
* * * * *
扉を開ければ既に身なりを整えたダンテが窓際に立ち外の景色を眺めていた。
「時間です」
「ああ」
頷いたダンテは暖炉の前に備えられていた椅子に腰をかけバージルを見つめた。
「靴紐を結んでくれ」
僅かに目を見開いたバージルだったが黙って椅子の前に片膝をつき磨き上げられた靴に手を伸ばした。
緩んでいる紐を指にかけゆっくりと結び上げていく。
これまでダンテの靴紐を結んでいたのは前任の執事だった。
それを従者だったバージルはいつも側で見つめていた。
バージルが執事となって仕えるべきは爵位を継いだばかりの弟で、それに伴って主の任を降りたダンテは客人扱いとなりその世話の全てを任されていたのは従者だった。
本来ならこの靴紐を結ぶのも従者の役目だ。
けれど今だけ、とバージルは思いながらもう片方の靴紐に手をかける。
おそらくこれが最初で最後、今だけは自分がダンテの執事として仕えることを許してほしいと願っていた。
やがて靴紐を結び終えたバージルが立ち上がろうとしたところにダンテが唇を寄せてきた。
それは軽く触れただけで離れていく。
それでもほんの僅かの間であれ、主と執事の時間を共有できたことに満足している二人には十分すぎるほどの口付けだった。
エントランスにはダンテのために用意された馬車と使用人たちが控えている。
バージルも執事として筆頭の位置についてダンテが出てくるのを待っていた。
やがて従者を従えたダンテが出てくると場の空気が一変する。
いつもならそのまま馬車に乗り込むダンテだったが、今日だけはバージルの前に立ちほんの短い間その目を見つめた。
「今までありがとう」
その言葉にバージルの喉が一瞬ひくつき唇が震えた。
けれど何を言うでもなく頭を下げ感謝の意を表す。
そうして視線を上げたバージルはいまだ見つめてくる瞳に僅かな笑みを乗せて見送りの言葉を送った。
「いってらっしゃいませ」
「ああ、いってくる」
かつて当り前のように交わしていた会話にダンテも静かな笑みを返してくる。
馬車に乗り込む直前、ダンテに杖を渡す従者の姿に以前の自分を重ねたバージルは、まるで一つの芝居が終わったかのような寂しい思いに捉われた。
動き出す馬車の音にその思いは膨れ上がり目頭が熱くなる。
けれど数度の瞬きでそれを抑え込んだバージルは背筋を伸ばし唇を引き結び、遠ざかっていく馬車をじっと見つめていた。
屋敷の中が使用人だけになってからは多少の仕事は減ったものの、執事であるバージルは何かと忙しく気を遣うことも多かった。
主不在のおかげで緩みがちな使用人を引き締めたり、屋敷の人間がいないのでは腕を奮う気も起きないとごねる料理長を宥めたりと主のいないことで起こる小さな問題も多々あったりする。
そんな一日の終わりにバージルはいつもダンテの使っていた寝室を訪れていた。
今ではすっかりダンテの気配は消え失せただの来客用の寝室となっている。
それでもバージルは朝には窓を開け空気を入れ替え、夜にはどこか不都合がないかを見て回っていた。
もちろんそんなことは客室係がきっちりとやっていることは承知の上なのだが。
いずれまたダンテがこの屋敷に来ることもあるだろう。
そのときはきっとこの部屋を望むに違いないと感じていたし、バージルもここ以外を案内するつもりはなかった。
灯りを手に主寝室をひと回りして続くバスルームの様子を見て、今すぐにでもかつての主を迎える準備ができていることを確認する。
そうして最後にダンテが靴紐を結ぶために腰かけた椅子に視線を添わせ、バージルは静かにその扉を閉めるのだった。
完
2009/10/03
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