接待から戻った克哉を待っていたのは、ソファに横たわった御堂の寝姿だった。
ローテーブルの上には空になったワインが1本と、もう1本は半分まで減っている上にコルクもない状態だ。
部屋で待っていろと言ったのは克哉だった。
なのに予想以上に接待が長引き、気がつけば終電もとっくに終わっている時間になっていた。
待ちくたびれて寝てしまったのだろうか。
すっかりこの部屋に馴染みこんな姿を晒している御堂にふわりと愛しさが湧いてくる。
そうして薄く開いた唇のあまりのあどけなさは克哉の頬をさらに緩ませた。
そんな御堂を前に、克哉は鞄に入っていたデジタルカメラを取り出してかしゃりとシャッターを切る。
その音で目覚めてしまうかと思ったが、意外にも眠りは深いようでいっこうに気づく気配はなかった。
それをいいことに、今度はもう少し近づいて顔のアップを収める。
かしゃり
かしゃり
……かしゃり
御堂の時間が一つひとつ自分の手で切り取られ収められていくことに震えるほどの悦びを感じてしまう。
そうして膨れ上がる欲求は抑えることもできず、克哉は御堂のネクタイを緩めてそれを解きワイシャツの胸元を肌蹴させた。
首にかかったままのネクタイは素肌に触れ、その深いワインレッドと御堂の白い肌のコントラストから目が離せなくなる。
かしゃり
ベルトを外し前をくつろげる。
ズボンを下ろし下着を下ろす。
かしゃり
かしゃり
かしゃり
柔らかい間接照明に照らされた身体にそっと指先を触れさせれば、思った通りに熱くなっている肌がしっとりと吸いついてくる。
誘われるままにしなやかな腰骨に唇を這わせると、御堂の全身がぴくりと小さく跳ねた。
途端に克哉の口角がにっと上がる。
少し下がって足の付け根にふっと息を吹きかけて、そのままぺろりと舐め上げた。
「……っ」
息を呑む気配に克哉は小さく笑って顔を上げる。
「御堂さん?」
僅かに震える睫毛を覗き込みながら克哉はゆっくりと顔を寄せていき、肌よりも少しだけ赤くなっている耳朶に噛み付いた。
「い……っ」
御堂もそれほど強く噛まれるとは思ってもいなかったのだろう、思わず声を上げ起き上がろうとするかのように肩を浮かせた。
が、その前に克哉が肩を抑えてしまいそれも叶わなくなる。
「いつから起きてたんですか?」
さらに耳朶を噛み続け、ときおり舌を差し入れてはわざと濡れた音を響かせる。
「寝たふりなんかして、撮られるのはそんなに興奮しますか?」
「ちが……」
しかし慌てて否定しようとした言葉はすぐに克哉の唇に塞がれてしまった。
「ん……っ、ふぁ……ぁっ」
同時に、半ば勃ち上がりかけていた下肢に指が絡み御堂の声と身体を震わせる。
「もっと撮ってほしいですか? ん……、綺麗に撮ってあげますよ?」
「や……ん、あっ」
唇を交わしながら囁かれる言葉が吐息と混ざって御堂の中に流れ込んでいく。
力なく拒否の態度を示そうとしてはいるが、唇は克哉を欲しがってそれを吸い上げようとしていた。
そんな御堂から無理やり唇を離した克哉は、はっと目を見開いたその表情にカメラを向ける。
かしゃり
「ほら……見てください、御堂さん」
抗議の言葉を口にしかかった御堂より先に克哉は首にかかっているネクタイを手に取ってその白い胸元に垂らしてみせる。
「この色、あなたの肌によく映える」
そうして一度解かれたネクタイを再び結び始めた。
ゆっくりと指を滑らせるように深紅の布を絡めて御堂の首元に結び目を作る。
「こんな綺麗なもの、残しておかないともったいないでしょう?」
かしゃり、かしゃりとシャッターを切りながらネクタイの端をなぞるように舌先で肌を辿り、やがてそれは小さく窪んだ臍へとたどりつく。
既にカメラのレンズはどこを向いているか分からない。
それでも克哉の繰り出す機械的な、それでいてどこか柔らかい音はどうしようもなく御堂を興奮させていった。
舌は臍を通り過ぎさらに下がり、薄っすらとした叢に吐息を吹きかける。
そのまま両足を抱え自分の肩に掛けさせると、多少の抵抗はするものの克哉を見つめてくる視線はもうすっかり熱に潤んでいた。
「裸にネクタイして靴下ですか……」
頬のすぐ横にある足首をとって靴下に包まれた指先を軽く噛む。
「今夜は随分とマニアックですね」
指先から甲、足首、ふくらはぎへと唇は移っていく。
そんなふうにされながら自分の猛る欲を晒していることに羞恥を感じているのか、なんとか足を閉じようとするものの到底そんなことで隠せるはずもない。
それでも恥ずかしさから逃れるように御堂は自分の目を手の甲で覆ってしまう。
「だめですよ、御堂さん」
しかしそれはすぐに克哉に阻まれた。
「ちゃんと見てください」
顔を覆う手を強引に引き剥がす。
それでも目を開けようとしない御堂に克哉は苦笑した。
「じゃ、今は見なくてもいいですよ。あとでちゃんと見せてあげますからね」
そう言って、克哉は足元に置いていたカメラを再度取り上げてシャッターを切った。
「や……」
弱々しく首を振るものの、御堂の欲はますます張り詰めとろりとした蜜を流し始める。
「もっと見せてください、御堂さん」
強く御堂の腕を掴んでいた腕が離されたかと思うと、今度はその指先が足の間に潜り込み熱く疼く場所に添えられた。
そのままゆっくりと差し込んでいく。
「ん……っ!」
途端に緊張する身体に同調して指には襞が絡みつく。
「感じますか?」
ゆるゆるとポイントを外しながら指を動かす。
けしていい所には触れないように。
「やっ、ぁ……っ! さ、えき……!」
決定的な刺激が受けられない焦れったさに耐えられず、やがて御堂の腰が揺れ始める。
「どこがいいんですか、御堂さん?」
そう言いながらも克哉は指の動きを止めて御堂の動くままに任せていた。
「あぁ……っ、んっ、あ、あっ!」
自分のいい所に指が当たるように腰を揺らしてくねらせる御堂の胸元に深紅の布がまとわりつく。
荒い息遣いの上で揺れるその色に誘われて、克哉はもう一度カメラのシャッターを切った。
2007/12/10
|