春めいた陽気になって暖炉に火を入れる必要がなくなっても、そこにクッションを並べてゆっくりと本を読むのがバージルの留守番スタイルです。
今日も悪魔狩りに出たダンテがいない間、大好きな本とクッションに埋もれて表情にはそれほど出さないものの満悦至極のバージル。手持ちの本は既に読み終えてしまったので、明日にでも新しいものを仕入れてこようと考えているところでその耳がぴくりと動きました。
ドアの方に目を向けてしばらくすると、事務所に剣やら銃やらを置いて身軽になったダンテが入ってきます。

「ただいま」
いつものように暖炉の前に陣取っているバージルを見てダンテは目尻に僅かな笑みを浮かべます。そしてこれもまたいつものように素っ気なく「おかえり」と言いかけたバージルの唇が、今日はなぜかふと止まってしまいました。クッションの山に横たえていた身体を起こしてじっとダンテを睨みつけてきます。
「どうした?」
耳をぴんと立てているバージルにダンテは首を傾げながら近づいてきました。空気が動き嗅ぎ慣れたほんの少しの悪魔の血の匂いに混じって、全くそれとは違う異質な香りが漂ってきます。
「……何を持っている」
「ん?」
何も手にしていないダンテは不思議そうな顔をして両手を広げてみせます。しかしバージルはじりじりと後退して部屋から出ていこうとさえし始めました。
「どうしたんだ?」
さすがに変に思ったダンテは、部屋を出ていこうとするバージルの腕を取って少し強引に抱きすくめてしまいます。
「馬鹿……っ、離せ!」
腕から逃れようと必死でもがきますが当然すんなり抜け出せるわけもありません。それどころかもがけばもがくほど不審に思ったダンテの腕は強まります。
「くっ、いいかげ……」
しかしそれまで暴れていたバージルの身体が突然沈み、くたりとなってしまいました。
「バージル!?」
慌てたダンテが腕の中を覗き込むと、バージルは頬を上気させてはあはあと浅い息をしています。その額に手を当ててみれば僅かながら熱がありました。
「具合が悪いなら本なんか読まないで寝ていろ」
一瞬慌てたものの、まったくと呟きながら力の抜けた身体を一旦抱き上げてゆっくりとクッションの上に寝かせます。
「ちが……、いったいどこに、行ってた」
そうして横になった途端、バージルはクッションに顔を埋めるようにして丸くなってしまいました。耳はへたりと伏せられ、尻尾も力なく垂れて時おり先端が痙攣するようにひくついています。
頬はますます紅く染まり、唇は堪えるようにきゅっと引き結ばれつつも震えていました。
「バージル?」
最初は具合が悪いと思っていたダンテでしたが、どうもそれは違うようです。クッションにすがって小さく震えている姿は、いつもダンテに抱かれて感じ始めたときの様子とよく似ていました。
そんなバージルの傍に腰を下ろしたダンテはそっと尻尾の付け根を撫で上げてみます。
「ひっ……ぁ」
大げさなほどにびくりと身体を震わせたバージルの唇から引きつった声が漏れました。さわさわと付け根を撫でているとクッションの端を噛んで目をぎゅっと閉じてしまいます。
「やめ……、くぅ……んっ」
クッションを噛みしめつつも漏れてくるその声は快感を耐えている時のものに間違いありません。
「どうしたんだ?」
尻尾をさすりながら覆いかぶさるようにして耳元で囁いてみます。しかもわざと息がかかるように。
「んっ」
小さく呻いて肩を竦める様子に、ダンテは舌先で耳朶をなぞってみたり差し入れたりしてみました。
「ぅあ……ばか……っ」
「したいなら逃げないでそう言えばいいだろう」
「だから違う、お前が……んぁ」
尻尾の付け根を撫でられているのが堪らないらしく、バージルの頬はますます上気して吐息も熱く湿ってきました。
「俺が、どうした?」
耳元から唇を離さずに聞き返すとびくびくと肩を震わせます。
「服……かふん、ついて……ぁっ」
「かふん?」
「とにかく、服、脱げ……シャワー行ってこ……」
服がどうかしたのかと、一旦起き上がったダンテは自分の服を見下ろしてみます。別にいつもと変わらない赤いコートでしたが、よく見るとその胸元から裾あたりまで白く細かい粉がついていました。どうやらバージルが言ったのはこれのことだったようです。
「花粉?」
顔を赤らめたまま、バージルもクッションに肘をついて上体を起こしてきました。
「かなり森の奥まで入っただろう。湖を超えてその先……」
「ああ」
「だから、早くその服を脱いで洗ってこい」
「花粉症だったのか?」
「……まあ、そんなところだ」
「ふぅん」
口ごもって視線を逸らせてしまったバージルにダンテは僅かにその唇を歪めてみせます。そしていきなり赤らんだ頬を捉え視線を合わせてしまいました。
「花粉症というよりは……」
ぐいと顔を近づけて唇が触れそうなところまで近づけます。
「身体が興奮してるんじゃないのか?ずいぶんと色っぽい目をしているぞ」
「……っ」
触れそうで触れない唇から漏れる吐息にさえバージルはびくりと震えて首を竦めてしまいます。
「そういえば猫科の動物だけに恍惚感をもたらす植物があるとかって話を聞いたことがあるな。お前なら知ってるんじゃないか?」
「し……らんっ、いいから早く服……っ」
「構わないだろう、このままで」
「ん……っ」
囁いた唇が触れて、ダンテは舌を差し出しバージルの口内をまさぐります。柔らかい唇の裏や歯ぐきを舐めて、少し硬くなっている舌を捉えると猫科独特のざらりとした感触がダンテの舌を刺激してきました。
それを探るように絡めながら吸い上げます。バージルの手が抵抗して少しでも離れようとぎゅっとダンテの腕を掴んできますが、そんな些細なものは抵抗のうちにも入りません。
「ふぅ……ぁ、ん、んっ」
逃れようとする首の後ろをしっかり押さえて動きを封じてしまい、さらにもう片方の手で背筋を撫でおろし尻尾の付け根をくすぐってやります。
「んぁっ、んー、ふぐぅ……っ」
それがたまらないのか、バージルの腰がゆっくりと動き尻尾の先もゆらゆらと揺れ始めました。もう快感に捉われてきた証拠です。
そうしている間にもバージルがダンテの腕の中でもがいたせいで、きっと花粉が煽られたのでしょう。それを吸いこんでしまったらしいバージルの息がますます浅く早くなり身体も熱くなってきました。

唇を離したダンテはそれを首筋に落とし舌先でつーっと舐め上げます。
「う、ぁ……」
さらに所々で強く吸い上げると鮮やかな紅い跡が浮かびあがります。ゆっくりとシャツのボタンを外していき現れた鎖骨にも唇を押し付けていきました。
ぽす、とバージルをクッションに押し倒すとほんのわずかに甘い香りが漂います。きっと花粉が舞い上がったのでしょうがダンテの方は一向に息が上がる様子もないところをみると、どうやら花粉に反応しているのはバージルだけのようでした。
やはりあの花が猫科にだけ特別に作用する植物だったのだろうかと、森の奥で見た白い花を思い出しながらバージルのシャツをすっかり脱がせ胸の先に唇を近づけていきます。
「んっ」
既に赤くつんと尖った乳首は敏感になっているようで、ちょっと舌先を触れさせただけで大げさな反応を見せてくれます。嬉しくなったダンテはちろちろとくすぐるように舐めては、もう片方を指先で摘んだり撫でたりし始めました。
「ん、ん……」
やはりいつも以上に感じているのか、いやいやをするように首を振っては小さく呻き腰を揺らして押し付けてきます。そんな様子にダンテの口元もつい緩んでいきました。もともと快楽に弱いバージルなので結局最後はいつもダンテに翻弄されてしまうのですが、最初からこんなふうに素直な行動に出てくるなど初めてといってもいいくらいです。
「バージル」
「ひぁっ」
ダンテが囁いた吐息と唇の動きに引きつった悲鳴が漏れ身体が跳ねあがります。追い打ちをかけるように甘噛みをしたり少し強めに摘むとバージルは喉を晒し背筋をしならせました。そのたびに腰が浮き上がりダンテの身体に擦りつけられます。
「これがいい?」
「ん……っ、んぁ……」
乳首を唇に含み舌先の動きを速めると、バージルはダンテの髪に指を差し入れくしゃりとしてきました。ゆらゆらと揺れる尻尾の先がダンテの腰を撫でていきます。
「ばか……も、や……ぁ」
そこばかりを攻める執拗な舌に焦れているようで、両手はしっかりとダンテの頭に添えられ離したくないそぶりをみせています。それに応えようと舐めたりつついたり吐息をふきかけたりしながら、ダンテの手はゆっくりと脇腹をなぞり下半身に伸びていきました。
触れた先は服の上からも分かるほどに硬くなっています。そこをやんわりと包んで擦るとバージルの唇から小さな悲鳴が上がりました。
「ひっ、ぅあ……ん、んっ」
胸から顔を上げて呻きを漏らす唇を塞ぐと今度はバージルの方から舌を絡めてきました。少し驚きつつもあやすように優しくその舌に応えているとちゅ、ちゅと濡れた音が響きます。
「バージル」
唇を離して見下ろすと青い瞳はすっかりとろりと潤んでいました。
「だ……て」
頬を上気させ無防備に開かれた唇が切なげに名前を呼んできます。
「ん、なに?」
頬に手を添えて親指の先でゆっくりと唇をなぞると僅かに眉根が寄せられました。
「だん、て……ぅ……ぁ」
下半身を探る手にますますバージルの瞳が熱を帯びていきます。頬に添えられた手をぎゅっと握りしめて浅い息を繰り返しながらじっとダンテを見つめてくるのですから堪りません。
「かわいいよ、バージル」
「だんて……?」
無意識のうちに呟いた言葉にバージルの瞳が応えるように揺れて近づいてきます。僅かに差し出された舌がぺろぺろとダンテの頬や鼻先を舐めて、やがて唇に触れてくる頃には二人の身体はすっかり快楽への期待に興奮していました。

普段ならまずあり得ないバージルの積極的な行動にダンテの熱も一気に上がってしまいます。あっという間にバージルの服を全て取り去り、既にしっとりと汗ばんでいる身体中にキスを落としていきました。
銀色の髪から白い足の指先まで余すところなくキスを受けたバージルの欲望は、触れただけで弾けそうなほどに張り詰め先端からとろりとした蜜を流しています。そんな快感への緊張で硬くなった脚の間に身体を入れて、ダンテは蜜を舐め取るように舌先でちろちろとそこをくすぐってやりました。
「んぁっ、あ、や……、だん……っ」
途端に太腿が震えてダンテの身体をぎゅっと挟み込んできます。けれどダンテはその腿を擦るように撫でながら、わざとちゅっと音を立てて先端にキスをしたり吸い上げたりの愛撫を続けていきました。
達するには物足りない、けれど感じるには十分すぎる舌の悪戯にバージルは腰を揺らし手近にあるクッションを掴んだり顔を押し付けたりしています。そしてそのたびに甘い香りが立ち上ってくるのです。
感じれば感じるほど身体を揺らし、そのせいで舞い上がった花粉を吸い込んでいるバージルの身体はますます抑えが効かなくなっているようでした。
「は、ぁ……ん、んぁっ、も……やっ」
「我慢しないで出せばいい」
「ぅ……ぁん、だんて……だんて」
「気持ちいい?」
脚の間に顔を埋めているダンテの髪を両手でくしゃくしゃにしながらバージルは切ない声でその名前を呼び続けます。ゆらゆらと揺れていた腰がもっと強い快感を欲しがるようにぐいぐいと押し付けられてきました。
「強情なのもいいが、やっぱり素直なバージルが一番可愛いよ」
そう言うなりダンテはキスをするだけだった唇を開いてバージルをその奥まで呑み込んでしまいました。舌全体を使って吸い上げるようにすると、頭上でひと際高い嬌声が上がります。
「あぁ!……や、それ……はんっ、んっ」
一緒に袋を揉み上げるようにすると腿がびくびくと震え身体をくねらせ始めました。
「だ、て……だんて!」
あまりに素直すぎる様子に驚きつつも、求められるままに熱を嬲ってバージルを追い詰めていくダンテの身体も抑えきれないほどに昂っていきます。
「ぅ、くぅ……っ、ぅん、ん、んっ」
奥まで呑み込みながら唇を激しく上下させてやると、限界が近づいてきたのか甘く零れていた声が唇を噛みしめて堪えるようなものに変わってきます。溢れる蜜とダンテの唾液が混じり、唇が動くたびに濡れた音が響いてさらに二人を煽っていきました。
「ん、ん……ぁ、も、でそ……、だんて、だ……て」
ふるふると震える腿がダンテの身体をぎゅっと締めつけて腰が浮き上がります。もう我慢もできないらしいその先端の割れ目に舌先をくいと差し込んでちろちろと舐めた途端。
「んぁ、あ、や……、ふぁ、ああぁ……っ」
身体をのけ反らせたバージルは溜った熱をびくびくとダンテの口に放ってしまいました。

「ぅ……ぁ、はぅ……や、ぁ」
解放されてくたりとクッションに沈みつつも、出されたものを綺麗に舐め取る舌の動きがバージルの熱を再び煽っていきます。すぐに立ち上がってしまったそれに小さくキスをしてダンテが顔を上げました。
「気持ちよさそうだったが、まだまだ足りないみたいだな」
はあはあと荒い息遣いのまま、薄らと閉じられていた瞳が開かれダンテを見つめてきます。一度達しただけなのにそれはもうすっかり熱に浮かされ潤みきっていました。
「ダンテ……」
そう呟いたかと思うと急に起き上がって抱きついてきたバージルの勢いに、気づけばダンテはクッションの上に押し倒されていました。
「だんて……」
馬乗りになって見下ろしてくる表情は眉根が寄せられとても切なそうです。ゆっくりと顔が近づいてきたかと思うと、バージルはダンテの顔や首筋をぺろぺろと舐め始めました。
「く……っ」
ざらりとした猫科独特の舌の感触がくすぐったくて、喉の奥で小さく笑いながらもダンテは片手をバージルの首筋に当てて宥めるように優しく撫でてやります。
やがて服を脱がされる気配に気づいたときはさすがダンテも驚いてしまいました。僅かに頭を上げてバージルの様子を窺えば、すっかり開かれた胸のあちこちを舐めながら今度はベルトに手を伸ばしてそれを外そうとしています。
押し倒されたり脱がされたりと、初めて続きのことに唖然としつつもダンテの身体は悦びと期待に大きく震えてしまいます。既に痛いほどに硬くなったものがバージルの手で取り出された時には、もうそれはすっかりしとどに濡れていました。しかも何の躊躇いもなく舐めてくるのですからたまりません。
「ぅ……くっ」
強すぎる舌の感触に思わず感覚の全てを持っていかれそうになって、ダンテは慌てて深呼吸をしてやりすごしました。が、バージルはそんな努力を無視して時おり小さく呻きながら舐めたり吸い上げたりしてくるのです。
もうここは一旦流されてしまおうかと、片肘をつき半身をわずかに起こしていたダンテでしたがまたぱふりとクッションに背中を預け身体の力を抜いてしまいました。小さくうごめく頭に手をやって柔らかい銀髪を撫でてやると尻尾がさわさわと腿のあたりを掠めていきます。そのくすぐったさと舌からの強烈な快感があっという間にダンテを快感の頂点へと導いていきました。
中に入っている時はそこそこ快感をコントロールすることもできるのですが、バージルの独特なざらつきを持つこの舌にはさすがにどうすることもできません。しかもこんなに積極的なバージルなのですから身体だけでなく感情もすっかり煽られてしまいます。
「ぅ……くっ、バージ……そろそろ、はなせ……」
飲むことには何の抵抗もないダンテですが、さすがに飲まれるのはどうにも気がすすみません。上体を起こしてバージルの頭を離そうと強めに手を添えます。しかしバージルは離れるどころかぴたりと腰を抑えて舌の動きをよりいっそう激しくしてくるのです。
「こら……、ぅ、くは……っ」
敏感なところを強めに舐められてしまったダンテは咎める間もなく達してしまいました。強烈な痺れが背筋をぞくりと震わせて、それに続く快感が全身に広がっていきます。
「ん……んぐ、ん……けほっ」
ダンテのものを飲みこんだらしい直後、少し咽ている様子に慌てて背中をさすってやるとしばらくして咳が収まったバージルがじっとダンテを見上げてきました。僅かに開かれた唇から覗く赤い舌がひどく扇情的です。
「バージル、いうことを聞かないから……」
快感の余韻に息を上げながらも唇の端についている自分のものを指先でそっと拭ってやります。すると気持ちよさそうに目を細めたバージルはまたぺろぺろとダンテの腰や腿の内側を舐めてくるのでした。

 

 

室内はすっかり甘い香りに満ちていて、それは時間が経つにつれどんどん濃くなっているようです。その香りにすっかり取りこまれているバージルの姿を見ていると、ダンテの中にもっともっとそれを乱れさせたいという想いが溢れてきました。
一度身体を離して体勢を入れ替えます。仰向けになって自分の顔を跨がせるように促すと、さすがに羞恥があるのか少しためらっていましたがやがておずおずとダンテの眼前に全てを晒してしまうのでした。
気持ちよく引き締まった尻をしばらく撫でまわしてからゆっくりと左右に開きます。
「真っ赤になってるな」
最奥に息づく蕾は赤く色づいて、見つめるダンテを誘うかのようにひくひくと震えていました。そこに舌先を伸ばしてちょんちょんとつついてやります。
「んぁ……!」
途端にきゅっと窄まったそこはダンテの舌を取り込もうとうごめきます。しかしダンテは舌を差し入れることはせず、ひたすらその周りにキスをしたり舐めたりを繰り返していました。
「うっく……ふぅ……んっ」
ダンテの腰にすがりつくようにしてバージルは焦れったい快感に腰を揺らします。一度放った欲望もすっかり腹につきそうなほどに頭をもたげふるふると震えていました。
やがて与えられる快感にたまらなくなったのか、バージルはまたダンテの下半身に顔を埋めそこらじゅうを舐め始めました。後ろへの愛撫をすればするほど、呻きながらあちこちをざらつく舌で舐めまわしていくのです。
その刺激にはさすがにダンテの熱もすぐに立ち上がってしまいました。もちろんそこもぺろぺろと舐められるのですから気持ちいい声が漏れてしまいそうになります。けれどせっかくのこんな機会、なんとかバージルを乱れに乱れさせてみたいダンテは自分が感じている場合ではないと大きく深呼吸をして身体を鎮めようとするのでした。
が、やはりバージルの舌の感触には敵いそうもありません。そこでダンテは目の前に揺れる腰を捉えて上体を起こしてみました。自然と前に押し出されたバージルはもうダンテの腰に顔を埋めることはできません。こうして背中を向けたまま両脚を跨がされ腰を突き出す格好になってはもうダンテの独壇場でした。
「ぁ……ん、ふぁ……っ」
腰を高く上げさせて狭間にたっぶり唾液を塗り込めると、バージルは手近にあったクッションを抱き込んでそこに顔を埋めてしまいます。
「ふぐ……ん、んっ」
耐えきれないかのようにクッションを噛みしめていますが、それは余計に花粉を吸い込みバージルの身体を昂らせるだけだということをすっかり忘れてしまっているようでした。
やがて狭間から顔を離したダンテは舌の代わりに指を一本つっと差し入れます。
「んーっ」
十分に潤わされて熱を孕んだそこは容易にダンテの指を受け入れるばかりか、それでは足りないとばかりにうごめき奥へ奥へと誘いこんでいきました。それに気付いていながらもダンテはゆっくりと中指を突き入れては抜いてを繰り返します。そのたびにぎゅっと締めつけて震える姿が愛しくてなりません。
ゆらゆらと揺れる尻尾がダンテの腕に寄り添ってきてもっと欲しいとばかりに絡まります。それに応えるかのように指を増やして中を探りぐるりと動かしてやりました。
「ひぁっ……あ、あぁ……!」
どこが一番感じるのか、もちろんダンテは十分に分かっています。しかしそこをわざと掠めるように動かしてバージルを焦らしながら震える尻尾の根元を舌先でつついてみました。
「はぁ……んっ、や……ぁ」
それがよほどいいのか、バージルは喉を反らしてきゅうきゅうと指を締めつけてきます。その反応が嬉しくて、指を動かしつつ根元を舐めたり軽く噛んだりしていると唇から零れる声がどんどん上ずり息遣いも浅くなってきました。
後ろだけの刺激でイくのはあまりないのですが、今なら十分にイけそうな様子です。
「またイきそう?」
柔らかい肌にわざと吐息を吹きかけるように囁くと、それにさえ感じるのかぶるりと腰を震わせたバージルはクッションに顔を埋めながらこくこくと頷きます。
「いいよ、イって」
「ぅぐ……ぅ、うぁ、あ、あぁっ……!」
しばらく焦らされていたせいか、そこをぐいぐいと擦り上げるようにしてやっただけで簡単にバージルは達してしまいました。そうして快感の余韻と収まらない息遣いに白い背中を波打たせながらダンテの脚に縋りついてきます。
指を食んでいる内壁もひくりひくりと動いては、なおも奥へと誘っているようでした。
「今日は本当に素直だな。ご褒美に思いきり気持ちよくさせてあげるよ」
あまり感じすぎない程度にゆっくりと指を動かしたつもりでも、達したばかりの身体は些細な感覚さえも快感と捉えてしまいそれを全身に伝えているようです。
二度の吐精で既に理性もほとんど失われているのでしょう。ダンテの指の動きに合わせて腰を揺らし自ら快感を求めてそこをひくつかせている様子は、これまでに見たことがないほど淫らで扇情的で可愛いものでした。

「だ……て、だんて……」
上ずった声で名前を呼びながらわずかに振り向いたバージルの瞳は熱に潤んで頬もすっかり上気しています。
「なに?」
「ぁ……、も、……んて」
途切れとぎれに紡がれる声と揺れながら押し付けられる腰からはバージルが何を求めているかなどすぐに分かってしまいます。けれどダンテはもっともっとバージルを乱れさせてみたいと思っていました。
「だめだよ、バージル。もっと気持ちよくさせてあげるから、少し我慢して」
「ひっ、……な……に?」
指を差し入れたまま、ダンテはもう片方の手でバージルの欲望をひと撫でしてからその根元を緩く抑えてしまいました。そのままゆっくりと指の出し入れを始めます。
「んっ、あ……ぁ」
ダンテを見つめる瞳が切なく細められて眉根が気持ちよさそうに歪みます。けれど指を全て差し込んだところでバージルの求める最奥までは到底とどくものではありません。それでも与えられる快感とそのもどかしさに手の中のものはすぐに熱を孕み硬くなっていきました。
「ぁあ、や……だんてっ」
抜き差しを繰り返しながら時おりいいところを掠めるたびにバージルの背中がしなり腿がびくりと震えます。内壁も絶え間なく動いては指を締めつけ誘いこんでいました。じっくりゆっくりと攻められて、掌の中で硬くなった欲望はあっという間に張り詰め蜜をとろとろと流し始めます。
バージルの唇も既に言葉を失っているようにひたすら喘ぐことしかできなくなっていました。そんな様子を見ながらダンテも指の動きを少しずつ早く、さらに中を抉るようなものに変えていきます。
「はぁ……んっ、ん、くぅぅー……っ」
大きくなる快感にバージルはダンテの脚に額を擦りつけ腰をぐいぐいと押しあててきました。
「ぅぐ……、も……あぁっ」
身体をくねらせ訴えても根元を抑えている指が緩められることはありません。そのせいで熱は行き場を失いどんどん身体の中に籠っていきます。
「だんて……だんてぇ……」
とうとう我慢できないかのように腰を低くしてダンテの腿に自分の熱を擦りつけてしまうのですが、もちろんそれはかえってバージルを苦しめるだけでした。それでもなんとか解放したくて擦りつける動きをやめることができません。
「ぅあ……ぁ、だ、て……はな、せっ」
「ん?気持ちいい?もう少し……」
「うぁああ……っ、やめ!……くぅぅ……っ」
次第に早く大きくなってくる指の動きに自分の身体を抑えることができず、無意識のうちに感じるところに当たるよう腰をくねらせてしまいます。けれどそうすればするほど根元を抑えられているバージルの身体は熱を溜めこみ、うねるような快感に全身の奥深くまで浸食されてしまうのでした。
「やぁ……ぁ、う、ぅ……も、ひっ……ん、んっ」
上ずる声に啜り泣きのようなものが混じってきて、バージルは激しく首を振りながらダンテの脚にしがみつきます。そうやって目の前に腰を高く突き出し背筋を反らせる姿はとてもしなやかで綺麗なラインを作り出していました。
「バージル。大好きだよ、バージル」
そう囁きながら薄らと汗に湿った肌に唇を寄せます。尻尾の付け根に軽く噛みつくと可哀そうなくらいに引きつった悲鳴が響きました。
「だ……て、……うぅ、もう……や、イきた……」
「ん?」
すでにそれは泣き声のようです。
「なに?」
「ひぁっ!ぁ……くうぅ……っ」
「どうしたいのか、聞かせて?」
ぐいぐいと指先で擦り上げ尻尾の周りを舐めまわしているとバージルの声はすっかり震えてか細いものになっていきました。
「イき……い、……イきた……ひっ……ぁ」
これまで聞いたことのない言葉を震えながら口にするバージルに、ダンテの中の愛しさが一気に膨らみ弾けます。
「いいよ、イって」
ありったけの想いで囁き内壁を強く擦り上げて、同時に抑えていた指を緩めた瞬間。
「ひぃ……っ、あ、あっ、ああぁ……っ!」
バージルの苦痛にも似た悲鳴が上がりました。
「ぁああ……ふぁ、あん……ん……」
びくびくと震える腿の間から、放たれた熱がダンテの赤いボトムの上に散っていくのが見えます。しかも快感がなかなか収まらないのか、指を締めつける内壁がいつまでも痙攣するように震えていました。

 

さすがに疲れ果ててしまったのか、全てを吐き出したバージルはそのままくたりとダンテの脚の上に伏せてしまいます。尻尾はだらりと垂れてぴくりとも動きません。ただ荒い息遣いのせいで背中が激しく上下しているだけでした。
そんなバージルを抱き上げ背後からゆっくりと抱きしめます。湿った肌がぴたりと吸いついてくる感触がひどく心地よくて、ダンテはその首筋に唇を埋めながらうっとりとしてしまいました。
「大好きだよ」
「ぁ……」
肌に唇を押し付けたまま囁くと小さな声とともにぴくりと身体が震えます。まだ快感に呑まれたままの身体はほんの小さな刺激にも敏感に反応してしまうようでした。
そんなバージルをゆっくりクッションの山に横たえて仰向けにさせます。自力で動くことも辛いのかすっかりされるがままになっていたバージルですが、脚を開かれその間にダンテが身をおいた途端はっと目を見開いて狼狽の色を見せました。
「まて……まだ……っ」
「待てない」
咄嗟に逃げようとした腰を捉え引き寄せるとそこに押しあてたものを一気に突き入れます。
「んあぁ……!」
幾度も達して十分な熱に潤んだそこは容易にダンテを受け入れ絡みつくように締めつけてきました。
「く、は……っ」
全身を緊張させながらぎゅっと目を閉じて、けれど奥まで侵入された内壁はきゅうきゅうと震えて悦びを訴えます。
「すごいな、そんなに……いい、か?」
「うるさ……うごくなっ」
感覚の全てを持っていかれそうなほどに強烈な快感がダンテの声をも震わせそうになっていました。しかしそれを悟られないように静かにゆっくりと深呼吸をします。といってもバージルも自分の感覚に精いっぱいでとてもダンテの様子など気にしていられる状況ではなかったのですが。
そんなこともあって、ダンテはしばらくそこに留まって息を整えてからひどくゆっくりと腰を動かし始めました。
「う……ぁ」
途端にバージルがきつくダンテを食んでうごめきます。花粉のせいもあってか中はこれまでに感じたことがないほどに熱を持っていました。ぎりぎりまで引き抜き再びじっくりと侵入して、最奥で少しだけ腰を回すと引きつった悲鳴が上がります。
このまま激しく突いて一緒に快感を極めたい衝動にも駆られますが、やはり我を忘れるほどにバージルを乱れさせたいという欲求にも抗えません。
「バージル、おいで」
そう言ったダンテは仰向けに倒れこみながらバージルの腕を引っ張って自分の腰の上に起き上がらせます。
「ん……っ」
いきなり体勢を変えられて驚いたバージルはダンテの腹の上に両手をついてわずかに腰を浮き上がらせました。が、ダンテはそれを抑え込み緩やかながらも二、三度突き上げます。そのまま小刻みに腰を揺らしてやると目をぎゅっと閉じたバージルはいやいやをするように首を振って唇を噛みしめました。
そうしてダンテは決して激しくしないように、ゆっくりとバージルの快感を追い上げていきます。しかし過ぎるほどに敏感になっている身体はすぐに熱を上げ、緩やかな動きだけでは物足りなくなっているようでした。
「動いて、バージル」
焦れったそうに捩られる腰を掴んで揺らしてやります。
「あ、ん……ぁ」
「感じるところ、分かるだろう?」
けれどバージルはダンテの腹についた両手をぎゅっと握りしめながらふるふると身体を震わせることしかできません。
「バージル、動いて」
「だんて……だんて……」
「バージル」
片肘をついてわずかに半身を起したダンテは俯くバージルの頬に手を添えて親指の先でそっと唇を撫でてやりました。くすぐったいのか感じるのか、小さく呻き見つめてくる瞳はまるで焦点が合っていません。耳はへたりと伏せられ時おりぴくりと動いていました。
「バージル」
深く静かな声にバージルの中がきゅっと反応します。
「動いてごらん」
再びクッションに背中を預けたダンテは腰に手を添えてきっかけを与えるようにゆっくりと揺すってやりました。
「ぁ……」
途端に締まる内壁にダンテも思わず眉をしかめます。それでも一つ息を吸ってやりすごし動きをリードしていると、わずかながらもバージルが自分から腰を揺らし始めていました。
「ん、そう……いいぞ」
ダンテが手を離してもそれは小さく動き快感を追い求めます。腰の周りをさわさわと撫でているとひくひくとしていた尻尾が伸びてきて手首に絡みついてきました。
「はぅ……っ、うぅ、ん、んっ」
少しずつ大きく揺れてくる腰とともに唇から漏れる声も次第に上ずり切羽詰まったものになっていきます。ほんのわずか、ダンテの頭にも霞みがかかったように感じるのはますます濃密になった花粉の香りが作用してきたせいかもしれません。
ダンテでさえそんな感じなのですから、再び熱を上げ始めたバージルにとってその香りはひどく過剰なものだったことでしょう。
「もっと、動いて……バージルの、いいように」
最初こそ逃げるように浮かせられていた腰は、今やすっかりダンテに押し付けられその熱を奥まで呑みこんでいます。そうして身体を前後に揺らしながら喘ぐ姿を見るのはダンテにとってまさに至福でした。
「あ、あぁ……ん、んっく……」
腹の上でぎゅっと握りしめられている手にそっと手を重ねるとすぐに指が絡みついてきました。互いに握り合った手を支えにするかのようにバージルは腰を振り快感をつのらせていきます。
「だんて、だんて、……んて」
すっかり反りかえった欲望もその動きにつられ震えながら蜜を流していました。それはバージルの腹や腿を伝いダンテの肌までとろりと濡らすほどに溢れています。けれど今にも弾けそうなほどに張り詰めたそれを解放することはできず、バージルは荒い吐息の下でひたすらダンテの名前を呼んでいました。
「どうした、イけない?」
「ん、ぅ……、だんて……っ」
絡めた指に力を込めて、瞳は熱に浮かされながらももどかしげな表情で見つめてきます。
「感じるように、動けばいい……簡単だろ?」
達することができず、快感にくすぶるバージルの中はいつにも増して熱くとろけてダンテを絶頂に追い上げようとしています。けれどどうしても先にバージルをイかせたいという妙な意地でもってダンテは懸命に己を抑えて理性を繋ぎ止めようとしていました。
「や、わからな……っ、だんてぇ……」
いやいやと首を振りながらも懸命に腰を動かすバージルは、本当に快感を追い求めながらも自分の一番感じる場所を上手く刺激できないでいるようです。
「ふっぐ……ぅ、ぁああっ、やぁ……もっ」
尻尾がダンテの手首に巻きつきぐいぐいと引っ張るように動きます。
「あ……んぁ、たす、け、……んて」
なんとかしてほしいと縋るように見つめてくる瞳には涙が浮かんでいました。
「バージル……、ここ、だ」
手を繋いだままダンテは探るようにぐいぐいと腰を突き上げます。
「ふぁぁっ、あ、あ、そこ……っ、やぁぁ!」
もう幾度となく抱いてその身体を知り尽くしたダンテの動きは、いとも簡単にバージルの快感を捉えて絶頂へと導いていきます。一番弱いところを突かれて喉を晒し、もはや声を抑えることもないままに嬌声を響かせる姿は視覚的にも十分すぎるほどにダンテを煽っていました。
「中……すごいな、そんなに、ここが……いい?」
「ぁああっ、あん……っ、いい、そこ、うぁ!」
ひくひくとうごめく内壁が無意識のうちにも強弱をつけてダンテを追い詰めていきます。同じようにバージルも既に限界の直前まで押し上げられていました。
「ひぁ……っ、もっと……だんて、も……っ」
既に理性を手放してしまったらしいバージルはあられもない言葉を紡ぎながら赤い舌を覗かせます。薄らと開いて見下ろしてくる瞳はこれまでに見たことがないような、赤とも金色ともつかない怪しい色を浮かべていました。
「だんて……だんて」
うわ言のような声に促され起き上がったダンテはクッションの山にバージルを押し倒すとその両脚をぐいと思いきり開かせます。腰をきつく捉え、今でも十分奥まで届いている自身をさらに押し付けて抉っていきました。
「バ、ジル……、いいよ、ぅ……くっ」
「ん……だんて、……ぅ、す……き」
声にならない声で囁かれた言葉にダンテは目をみはりました。が、それも互いに高め合う快感の波にあっという間にさらわれてしまいます。
「あ、あっ、も……でそ……っ!」
腰を浮かせながら身体をくねらせ、バージルは腰をとらえているダンテの腕をぎゅっと掴んできました。わずかに立っている爪がその肌に喰い込みます。
「ぁ、あっ、ん……、んぁっ、ああぁ……!」
「くぅ……っ、バ……ジルっ」
白濁が放たれバージルの胸や腹に散ると、その内壁もきゅうきゅうと痙攣してダンテを締め上げます。ほとんど一緒に達した二人はその直後、激しい快感に捉われながらもその視線を絡み合せました。
「だんて……」
抑えきれない息遣いに大きく胸を上下させながらバージルの唇が小さく動きます。とろりととろけた瞳はすっかり無防備な笑みを浮かべ満足感に浸りきっていました。伸ばされた腕がダンテの頬を捉え顔を寄せてきます。
「大好きだよ、バージル」
唇が触れてくる直前、ダンテはそう囁いてゆっくりと目を閉じるのでした。

 

 

陽も高くなって随分と時間が経ちましたが、カーテンを引いた寝室は午睡を貪るにはちょうどいい薄暗さになっています。当事者が言うところの花粉症の影響もあって、朝まで散々に愛され続けたバージルはそれからずっと眠ったままで起きる気配もありません。
けれどそんなバージルを腕の中に納めて、ダンテは飽きることもなくひたすらその寝顔を見つめていました。
何か夢でも見ているのか、時おり耳がひくりと動いたり唇が震えてわずかな呻きが漏れてきたりします。それがまたダンテを楽しませ愛しさをつのらせていくのでした。
そろそろ陽も傾き始めたのか室内が暗くなってきた頃、やっとバージルの睫毛が戸惑うように震え始めました。透き通る青い瞳が開くのを期待してダンテは瞼や鼻や唇にそっとキスを落とします。
すると。
「ん……、にゃ……ぁん」
実に甘ったるい可愛いらしい声がその唇から漏れてきました。
「…………」
確かにバージルは猫科の生き物ですから「にゃあ」と鳴くのも分かるのですが、出会ってから今まで一度もそんな声を聞いたことのないダンテにとってそれはひどく衝撃的なものでした。しかもその鳴き声は主に性的な部分を思いきり直撃してくるのですからたまりません。
我慢がならず唇や頬や耳元にキスを落として白い喉元を撫でているとさらに無防備な声が漏れてきます。
「ぁふ……、にゃ……ん」
それを心地よく聞きながら、ダンテの手は大胆にバージルの身体をまさぐり始めます。が、やはり花粉の効能はすっかり切れていたのでしょう。
「ん……?な……、ダンテ!」
聞きなれたいつもの声がしたかと思った途端、腹のあたりをげしげしと蹴られてダンテの顔に苦笑が浮かびました。
「おはよう、やっと起きたか」
そう言ってちゅ、と鼻にキスを落とします。
「といっても、もう夕方だな」
「はなせ……こほ、けほっ」
いつもの調子でダンテの胸に腕を突っぱねたバージルでしたが、突然喉を抑えて咳きこんでしまいました。
「大丈夫か?」
思わず覗きこんでみるとバージルは喉を抑えながら不快そうに眉根を寄せています。
「喉が、痛い」
「まあな……」
くすくすと笑うダンテにその表情はますます不機嫌になっていきました。
「あれだけ鳴けば喉も痛くなるだろう」
「……っ」
途端にうっと言葉を詰まらせた様子からして、どうやら昨夜のことをちゃんと覚えているようです。けれどバージルは素知らぬふりを決め込んでダンテの腕から抜け出ようとしました。
が、もちろんダンテは再びバージルを抱き込んでベッドに引き戻してしまいます。
「離せ、水を飲みに行くんだ!」
「水ならそこにあるよ」
ほらと視線でサイドボードを示してやると一瞬おとなしくなったバージルですが、そのボトルの隣に置かれていたものを見た瞬間緊張に身体を硬くしてしまいました。
「な……んだ、あれは」
唖然とするバージルの視線の先には鉢植えにされた白い花があります。
「なぜ、あんなものが……」
「ん?」
柔らかい耳朶にキスを受けもぞもぞと身体を探られているのも気づかないほどにバージルの身体は緊張に包まれていました。
「ああ、お前が寝ている間にちょっと取ってきた。綺麗だろ?」
「き、さま……」
まるで威嚇のように爪を立ててくるバージルを軽くあしらって、ダンテは抵抗できないようにしっかりとその身体を抱きしめてしまいます。
「大丈夫だ、花粉はちゃんと落としてある」
「うるさい、もう離せ……んっ」
やはり体格と体力の差は如何ともしがたく、抵抗らしい抵抗もできないままにバージルは唇を塞がれていました。
「ん、ふぁ、ん……」
舌を差し込んで弱いところを舐め上げていくと次第に身体の力が抜けていくのが分かります。もしかしたら昨夜の熱がまだどこかにくすぶっていたのかもしれません。
本当はダンテも喉の渇きに水を飲みたいと思っていたのですが、そのために今バージルを離してしまっては絶好の機会を逃してしまうかもしれません。それでも喉の痛みを訴えたバージルのことを考えて、ダンテは唇を合わせたまま手を伸ばしてボトルを取り上げました。
キスをしたまま器用にキャップを外し、一旦唇を離して水を含みまた唇を合わせます。
「ん……っ」
その意図を察したバージルは自ら求めるように唇を開き水をこくりと飲み下しました。そうやって抱き合ったまま水分を補給してボトルを空にしてしまいます。
軽くなったそれをぽいと投げ捨てたダンテは、やはり唇を合わせたままバージルとともにベッドに沈みこんでいきました。
やがて暗くなった室内に薄らと月の明かりが差し込む頃には、甘く湿った吐息と鳴き声がひそやかに響き渡っているのでした。

 

2009年3月オフ発行
2011/07/11 サイト掲載


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