腰のあたりにさわさわとまとわりつくくすぐったさにバージルは薄らと目を開けた。
室内はまだ暗い。
「やめろ……」
朦朧とした意識のまま掠れた声でそう呟いて、隣からちょっかいを出しているであろうダンテから少し身体を離した。
それでもさわさわとした悪戯は腰のあたりに絡みついてくる。
「いい加減にしろ」
軽く蹴りを入れると寝ぼけた呻き声がして身体をもぞもぞと動かしてはいるがちょっかいをやめる気配はないらしい。
さらにそれがバージルの脚の付け根あたりを彷徨い始めたとき、
「いい加減にしろというのが分らんか!」
睡眠を邪魔されてキレたバージルはまとわりついてくるそれをぐいと掴んで捻り上げてやった。
「ぎゃっ!?」
途端にダンテの奇妙な悲鳴が響く。
が、どうにも感触がおかしい。
捻り上げた手の中のものを見てみれば、てっきりダンテの腕だとばかり思っていたそれは柔らかい毛に覆われた、どうみても猫の尻尾のようなものだった。
毛布を捲り上げてその先を辿っていけば、信じがたいことにダンテの尾てい骨あたりに繋がっている。
「……んだよ、バージル」
状況を呑み込めていないダンテがのそりと起き上がってくる。
それを見たバージルはまたしても目を瞠ってしまった。
「ダンテ、それ」
とダンテの頭を指さすと同時に、ダンテも驚いたように目を丸くして「バージル?」とぐいと顔を寄せてきた。
「なんだよ、その猫耳」
「なに?」
「こんな夜中に猫耳つけて俺を起こすなんて、そういうプレイしたいわけ?」
「何を言ってる、それはお前だ」
「は?」
それ、とダンテの頭に向けた指先でぴょこんと生えている猫耳をつついてみる。
「んっ」
途端に耳をひくりとさせて首を竦めたダンテに「ほう」とバージルは目を細めた。
驚いたダンテも自分の頭に手を当ててみる。
「え? え? 何? えーっ!?」
ふにふにと自分の頭に生えた猫耳を触っては本来の自分の耳を触ってみたりと混乱をきたしているダンテを見ながら、そういえばとバージルも自分の頭に手を当ててみた。
ダンテが言っていた通り、やはりそこには柔らかい毛の感触が飛び出している。
触ってみればちゃんと感覚もあって暖かい。
ついでにバージルはさっきまで手にしていた尻尾を再度掴みあげた。
「尻尾もついてるぞ」
「え?」
無造作に掴まれ目の前に差し出されたそれを凝視して、バージルがさっきやったのと同じようにその先をたどっていけば自然と身体をひねって腰のあたりを見つめる格好になる。
「バージル、ちょっと手ぇ放してみて」
言われた通りバージルが手を放すと、尻尾は二人の間でゆらゆらと揺れ時おり意思を持つようにバージルの首筋を撫でたりしていく。
「お、なんとなく分かってきた感じ」
どうやら尻尾を動かす感覚を掴もうとしているらしい。
ダンテに生えているなら恐らくはと自分の背後を振り返れば、やはりバージルの尾てい骨からも尻尾が生えていた。
腰のあたりに意識を集中して筋肉を動かしてみれば、多少の違和感を感じるもののだらりと垂れていた尻尾は軽くぱたぱたとシーツをたたき始める。
「ふむ……」
上げてみたり振ってみたり、そんなことをしているうちにもダンテはとうにコツを掴んだらしくさわさわとバージルの身体をあちこち撫でまわすようになっていた。
「なあなあ、バージルー」
ベッドに両手をついてぐいと顔を寄せてくる姿はまさに猫そのものだ。
にんまりと悪戯そうな笑みを浮かべた瞳には興味津々といった光が宿っている。
「しようぜ。なんか興奮してきた」
「ふむ。試してみるのも悪くないな」
「だろ?」
覗き込んでくるダンテの顎に指をかけて上向かせる。
一、二回啄んで舌を差し入れれば待ちかねたようにダンテの舌が絡まってきた。

「ん……、なんだ、これ……」
いつもと違う感覚に一度唇を離して自分の手首のあたりを舐めたダンテは「うわ」と呟いた。
「ざらざらしてる」
「ほう?」
薄らと笑みを浮かべたバージルはダンテの首筋に舌を這わせて舐め上げてみた。
「うひゃっ、ちょ……っ」
途端に首を竦め反射的に逃げようとする肩を押さえつけながら柔らかい肌を嬲っていると次第にダンテの吐息も甘い色に染まってくる。
「んっ、バージル……くすぐったいって」
「気持ちいいの間違いだろう」
「くすぐったいの」
甘えた声にくすくすとした笑いを含ませたダンテが尻尾でバージルの背中を撫でてきた。
人の手とは違う乾いた感覚が触れていくのは新鮮で、それが腰のあたりを這いまわるにつれ尻尾の生えている尾てい骨のあたりがやけに熱く疼き始める。
首筋や鎖骨に舌を這わせながらダンテの尻尾の生え際に指を添えて軽く擦ってやると、ダンテは面白いほどにびくりと跳ねて小さな悲鳴を上げた。
「なに、そこ……すげ……」
「いいのか?」
「ん、堪んない……ほら」
ダンテが同じように手を伸ばしてバージルのそこに触れてきた。
途端に腰を引いてしまいそうなほどの痺れに覆われ、それがゆっくりと快感に変わっていく。
「どう? いいだろう?」
「そうだな……」
身体を寄せてゆっくりと付け根に触れながらキスをしたり首筋を舐め合ったりしていると、その快感を表すかのように互いの尻尾が揺れシーツの上で絡み合う。
「バージル、すごくいい……これ癖になりそ」
すりすりとバージルの肩に額を擦りつけながら吐き出す熱い吐息が肌を震わせてぞくりとした。

「バージル……」
すっかり興奮の熱に昂ぶったバージルのものにダンテが手を伸ばしてくる。
強請るように指が触れてきた途端、またしてもダンテは「はぁ!?」と間抜けな声を出してバージルの股間を覗き込んできた。
さっきまでの甘い雰囲気はどこへやら、無言で凝視しているダンテの視線を追ってみればそこには普段とはやや異なった感じの自分のモノがいきり立っている。
「ちょっと触ってもいい?」
「ああ」
おそるおそるといった感じでダンテが手を伸ばしてそれに触れてみる。
「……っ」
「感じる? いつもと同じ?」
僅かな刺激にもぐんと熱を増したバージルの欲望には棘ともイボともつかない突起状のものがぼつぼつと浮き上がっていた。
「これ……なに?」
自分の股間にも目を落として、同じ状態になっていることを確かめてダンテは眉を顰める。
「知らないのか?」
「何を?」
「交尾のときの猫のペニスがどうなるか」
「どうなんの?」
「自分で調べろ」
「あっ、ちょ……んぁっ!」
お返しとばかりに握り込まれてダンテの唇から甘い声が漏れる。
「バージル、ね、バージル……こうしてみよ」
さらに身体を寄せてきたダンテは腹につくほどに反り返っている互いのものを両手に挟んで擦り合わせた。
「うわ、やっぱすげ……」
「くっ」
いつもより鋭い刺激にバージルも思わず喉を鳴らして身体を強張らせる。
「バージル」
顔を寄せて舌を差し出してくるダンテのキスを受けながらバージルは手を背後に回して尻尾の付け根を擦ってやった。
両手を使っているダンテは尻尾の先でちょこちょことバージルの同じ場所をくすぐってくる。
唇や頬の裏側をざらついた舌が滑っていく感覚も肌を粟立たせるほどに刺激的だ。
「ん……、ふぁ、一回さ……イっちゃわね?」
「好きにしろ」
唇を離したダンテが快感に眉根を寄せながら見つめてくるのに少しつっけんどんに答えたものの、バージルもいつもと違う状況のせいかそうとう切羽詰まっていた。
早くなるダンテの手の動きに唇を噛みしめ声を抑える。
やはり弟にされて早々にあられもない声を聞かせるのは悔しかった。
それに引きかえダンテは奔放に嬌声を放つ。
それが互いの興奮を煽り快感を呼び起こすのだと分っているのだろう。
「んっ、あ、も……でそ……バージルは?」
バージルの肩に額を押しつけて荒い吐息をつきつつ動かす手からはいつの間にか濡れた淫らな音が響いていた。
「ああ、俺もだ……」
「うん……なあ、触って」
後ろに回っていたバージルの手を取ってダンテは自分のものを握らせる。
互いに互いの欲を相手に委ねる行為はあっという間に二人を極みにまで持ち上げ絶頂を超えさせた。

 

ぐったりとしたダンテがバージルに抱きつき覆いかぶさるようにして一緒にベッドに倒れ込んだ。
大きく上下するダンテの背中に手を置いてすっと背筋を撫で上げると小さく震えて甘えるようにキスをしてくる。
しばらく戯れのようなキスを交わしてから、バージルはおもむろに体勢を入れ替えダンテをうつ伏せにさせた。
少し伏せっている猫耳にふっと息を吹きかけ甘噛みしてやると途端に「ひゃっ」と肩を竦めて息を詰める。
ぴくぴくと震える耳に舌を差し込んでわざと濡れた音を立てれば、よほど堪らないのか尻尾がくねくねとバージルの腰に絡みついてきた。
猫耳から本来の耳へ、そして首から背筋を舐め上げていくといつもよりざらつく舌にダンテはシーツを握りしめ焦れるように腰を揺らし始める。
それを持ち上げ膝を立てさせるとダンテが焦ったように後ろを向いた。
「なに、いきなり後ろから?」
「その方が獣らしいだろう」
少し脚を開かせ双丘を割るように手を当てると、どれだけ身体を交えてきたといっても眼前に晒されることには抵抗があるらしくダンテは僅かに身を捩って逃げようとする。
構わず開かれた中心を舌先でつつくときゅっと襞が窄まりダンテの唇から小さな喘ぎが零れた。
唾液を塗り込めるような愛撫はいつも通りなのに、身体の異変のせいか舌のざらつきのせいなのかダンテのそこは異様に熱を帯びてひくついてくる。
「バージル、も……いいから」
「ん?」
「いれてよ、はやくっ」
まだ舌で濡らしただけで指もいれていない。
確かに熱を持って潤んではいるがバージルのものを受け入れるまでには解れていなかった。
けれどバージルは言われるままに膝をつきダンテの腰を押さえると一気にそこへ突きいれる。
「んあぁーっ、あ……くっ」
苦しみにも似た声を上げたダンテは枕を抱きしめながら頬を埋め、しかし奥へ奥へと誘い込むようにバージルを締めつけてくる。
「痛むか?」
そんな問いに僅かに視線を向けてきたダンテがおかしそうに笑った。
「んだよ、珍しいじゃん。そんなこと聞いてくるなんて」
言葉の合間にも息が途切れ、瞳はすっかり熱に浮かされたように潤んでいる。
「痛みはないのか?」
「ぜんぜん……それよりやばいよ。ほんと……っ、も、たまんない」
「そうか」
「なんなんだよ、焦らしてんの?」
一向に動こうとしないバージルをわざとぎゅっと締めてやるとさすがに歪んだ表情で唇を引き結んだ。
「いや、雌は交尾のときに相当痛がると聞いていたからな。抜くときだけか?」
「どうでもいいからさぁ……」
「やはり完全な猫ではないからか」
「ちょっとバージル!」
耐えかねたダンテは自ら腰を振り尻尾でもってバージルの首のあたりを撫でまわし始めた。
「堪え性がないな、お前は」
「悪かったな、早くなんとかしろよっ」
そんな言葉の通り、バージルを呑みこんでいるそこは傍目にもひくつき紅く熟れきっている。
「本当に……」
さらに奥へ押し込むようにしてダンテにのしかかるとこちらもひくひくと動いている猫耳に息を吹き込むようにして囁いた。
「我儘な猫だな」
「ひっ」
びくりと震えた首筋をかぷりと噛んでやわやわと歯を立てる。
「んぁ、くぅっ、ああぁ……っ」
ぎゅうっと中が締まったのと同時に達してしまったダンテはびくびくと続く吐精の快感に枕を噛みしめていた。
「くっ、ダンテ……っ、まだ動いてもいないぞ」
そう言いながらも危うく引きずられそうになっていたバージルは大きく息を吸ってそれを堪える。
「あー、予想外、悪ぃ……」
「まあ、いいさ」
「ちょ……っ、まった……」
「駄目だ」
ゆっくりと動き始めたバージルは片手で腰を押さえながらもう片方で尻尾の付け根あたりを擦り上げた。
「あ、あぁ、バージル……そこ、そこ!」
「どこだ?」
「そこ、もっと……前も、触って……」
「ここか?」
腰から離した手で胸の先端を摘んでやると面白いほどに尻尾が跳ね内壁が締まる。
「ちが……っ、あぁ、でもいい、んぁっ、あ……」
「いいぞ、ダンテ……」
「バージル、バージル!」
何かを求めるように揺らいでいた尻尾がバージルの背後に周り尾てい骨あたりを探り始める。
バージルも尻尾を前に回して、突き上げる度に震えている欲望をさらさらと撫でてはまた首筋を甘噛みした。
「あぅ! あぁ……、も、おかし……またっ」
既に二度達したにも関わらず、ダンテの熱はぎりぎりにまで張りつめてぽたりと淫らな蜜をシーツに零している。
その先端を掠めるようにバージルの尻尾がまとわりつく。
「バージル、バージ……、もっとして、も……っ」
枕に額を擦りつけて腰を高く掲げたダンテはまるで痙攣しているかのように全身を震わせながら腰をつき出してきた。

「ダンテ……くそっ」
さすがに切羽詰まってきたバージルも両手でダンテの腰を強く捉えて突き上げを激しくしていく。
「あっ、あっ、すげ……、なんで…こんな、くぅ……!」
最奥まで突いてぎりぎりまで引き抜いて、そのたびにバージルの欲望に浮きあがった突起が内壁を刺激して身体の髄までも痺れさせるような快感を引きずり出していった。
数えきれないほど身体を重ねてきたせいで互いにどうすればいいかは知りつくしている。
意識などしなくても身体が勝手に動いて快感を高め合う。
限界が近くなったバージルは既に自らの蜜で濡れきっているダンテの欲望に手をかけた。
「うぁっ……バージ……!」
「く……うぁっ」
その先端にくいと指を喰い込ませた瞬間、呻いたダンテが身体を震わせバージルを追い詰める。
そうして掌にダンテの熱が迸ったのから少し遅れて、バージルもぐいと押し付けた最奥に堪え続けた欲望を叩きつけていた。

 

ぐったりとベッドにうつ伏せになって枕を抱えるダンテの背に、これもまた脱力しきったバージルが乗りかかっている。
そこはまだ繋がったままだ。
やはりだらりと垂れたダンテの尻尾は時おり小さくぴくりと動いて、それに同調するように収まったままのバージルを内壁が軽く締めつけた。
「なあ、これいつまであると思う?」
「ん?」
ぱたぱたとダンテの尻尾がシーツを叩く。
「朝までには消えてくれないと困るな」
「だよなー。でもさ……」
ダンテはもぞもぞと動いて小さく呻きながら身体を離す。
そうして起き上がってバージルの腰を跨ぎ馬乗りになった。
「すっごくよかったよな」
バージルの腹に手をついて同意を求めるように顔を突きつけてくる。
「そうだな」
ダンテの首を捉えて深く唇を合わせると尻尾が悪戯をするようにバージルの太腿あたりを撫でていった。
「もっかいしようぜ? これがなくなっちまう前にさ」
「だったら今度はもう少し可愛く鳴いてみろ」
「俺はあんたの声も聞きたいんだけどなー」
「ふん」
ひくりと動くダンテの猫耳をふにふにと触りながらバージルは口元ににんまりとした笑みを浮かべる。
「いつも言ってるだろう。お前次第だ」
「はいはい」
くすりと笑ったダンテは嬉しそうに尻尾を振りながらバージルにキスをして熱の残る身体を押し付けた。

 

2009/10/15


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