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見上げるほどに高い木々が鬱蒼として陽の光を遮り、雑草というには硬く細長い葉を持ったやつが腰の辺りまで伸びていて足下もまともに見られない。しかも枝からぶら下がった蔓があちこちで顔に当たってきたりするのがなんとも鬱陶しい。
そんな薄暗く湿った森、というよりはほとんど密林のような中で数時間も悪魔を相手にしていたんだから、突然目の前に広がったこんな光景にはしゃぎたくなるのも当然だろう。
「すっげー!」
悪魔の血を吸って重たくなったコートを脱ぎ棄てて、俺は少し高くなっていた岩場から青い海に飛び込んだ。
一気に身体を包んだ水は少し冷たい。
けれど自分が沈んでいくごぼごぼという音がやけに新鮮に聞こえてなんだか嬉しくなってきて、と思ったら今度は浮力がついて勝手に身体が浮き上がっていく。
思いきり海面に顔を出して目を開けてみれば、髪を滴ってきた海水が目に入って痛かった。
そんな俺を少し遅れてやってきたダンテは呆れたように見下ろしている。溜息をついてやれやれとでも言っているんだろう。
まあそれも分からないでもないが、やっぱり高揚する気持ちは抑えられない。
俺たちが一緒に仕事に出るのは珍しいし、しかも何日もかけての遠出になったのは初めてだ。
そのせいで最初っからどこか気持ちが弾んでいた上に仕事も無事に終わったんだから今の俺はなかなか気分がいい。
「おっさんもこいよ!」
「ほんとにガキだな、お前は」
岩の上に座ってこっちを眺めているダンテに両手でもって海水をかけてやったがあと少しのところで届かなかった。
「服だって血だらけで気持ち悪いだろう? ついでに洗濯しちまおうぜ」
「誰のせいでこんなに血を浴びたと思ってやがる」
はい、俺のせいです。
「だから、水浴びしようって言ってんだろ」
まっとうな意見だと思う。
まさかあんな血なまぐさい服着たままじゃ街にだって戻れやしない。
「なあ、おっさん!」
「はいはい」
分かった分かったというように軽く手を振ったダンテは、いかにもよっこらしょと言いそうな格好でだるそうに立ち上がると背中の剣を下ろして赤いコートを脱いだ。
俺と違っていろいろと着込んでいるから脱ぐのも面倒くさそうだ。
コートを脱いでガンベルトを外したりシャツを脱いだり、だけどそんな姿を見ているのも悪くない。
明るい陽の下に晒されたその身体はおっさんの年にしてはとんでもなくデキている。
俺だって身体には自信あるほうだけど、あれと比べたらまだまだ薄い。
ちくしょう、と思う。
同時にその胸板を見るだけで下の方が疼き始めちまったりするのが自分でも呆れちまうところだったりする。
よくダンテもそこらへんのことをからかってくるけど、そればっかりはどうしようもない。
一度感じ始めたらもう止まんねえし。
あれだな、多分。
悪魔どもを斬り伏せてたときの興奮が収まっていないんだ。
あの高揚感はどこか根っこの方でエッチなことと繋がってるに違いないと思う。
やっと服を脱ぎ終わったダンテは突き出た岩の端っこに立って、どこの飛び込みの選手だよってくらい綺麗なフォームで俺のすぐそばに突っ込んできた。
ただ全裸でそれやられてもちょっと笑っちまうんだけど。
しばらくして浮き上がってきたおっさんは、ぷはっと息を吐いて海水を弾くように頭を振ってべたりと顔に張り付いた髪を撫で上げる。
「少し冷たくないか?」
「すぐに馴れるだろ」
そうして俺はダンテに抱きついた。
ずっと立ち泳ぎしているのが面倒になったのが半分と、こうしてくっつきたいのが半分。
抱き枕みたいに腕と足を絡ませるとダンテは少し沈んで何やら呻いた。
どうやら俺に抱きつかれた勢いで少し海水を飲んだらしい。
それでも構わずしがみついて太い首に頬を擦り寄せると「おいおい」と大きな手が俺の背中に回される。
「身体洗って洗濯するんじゃなかったのか?」
「だったら俺の身体、洗ってよ」
それからまた何か言われる前に唇を塞いでやった。
さすがにしょっぱかったがそれも最初のうちだけで、すぐに互いの唾液で唇は塗れてそんな味も分からなくなっていく。
しっかりと抱きつきながら思いきり舌を追いかけて絡めて、けどそんな俺を宥めるみたいにダンテの舌は少し優しい。
「ん、ん……」
キスってのはまじでやばいと思う。
セックスはいいけどキスはダメって街の女がいるけど、確かにその通りだ。
感情抜きにしたってセックスは気持ちいいけど、キスだけは惚れてるやつじゃないと感じない。
そんな証拠に、俺のものはキスをしている間にもどんどん熱くなってきてすっかりズボンの中で窮屈な思いをしている。
キスをしながらそれをダンテの腹に擦り付けてみたが、さすがに服越しというのはどうにも妙に焦れったい。
片手でベルトを外して前を開けると、その気配に気づいたダンテは唇をくっつけたままで「随分とその気だな」と言った。
俺にしがみつかれたまま泳いでいるせいかそれとも長いキスのせいか、少し息が上がって掠れているその声は今の俺には堪らない刺激になる。
「ん、も、我慢できない。しようぜ?」
「この状態でか?」
「いいんじゃね? こういうのもさ」
俺は片手でダンテの首にしがみついたままズボンその他を脱いでそれを近くの岩場に放り投げた。
ちょうどダンテの服があるあたり。
これで思いっきりくっつける。
もう一度両腕を首に足は腰に回してぐいぐいと俺のソレを押し付けた。
「ん……っ、なあ、抱いてよ?」
そこから伝わってくる気持ちよさに声が上ずる。
もう欲しくて欲しくて堪らない。
「ったく、このエロガキが」
この少し呆れた声は了承ってことだ。
同時に大きな両掌が俺の尻を持ち上げるように当てられて身体が少し緊張する。
「俺はこうしてるのが精一杯だからな。自分でなんとかしろよ」
「OK」
キスをしながら片手でダンテのを弄り始めると俺の後ろにも指が差し込まれてくる。
「……つっ」
「すげえ熱くなってるな。これならすぐに入るんじゃないか?」
からかうような声が熱い息と一緒に耳から入って意識を蕩かしていくみたいだ。
「だから、欲しいって言ってるじゃん」
弄ってるダンテのだってあっという間に硬くなってきてるし。
「んぁ……、あ、ぁ……」
すぐにゆっくりと動き始めた指を俺はぎゅっと締め付けた。
よく力を抜けとか言われるけどそれは到底無理な話で、こればっかりはどうにもコントロールができない。
「もっと強く……、もっと……」
抜き差しだけじゃ物足りなくてつい腰を動かしちまう。
「ここか?」
「うぁっ、……っ、んぁ、ぁ……」
わざわざ聞く必要もないくらい知ってるくせに、くっと小さく笑っていきなりそこを抉るから思わず悲鳴みたいな声が出た。
たまらなくてぎゅっとしがみつくと前のものはダンテの腹に擦り付けることになる。
それで腰を揺らそうものなら前後からの快感がなかなかすごいことになってきて、俺は早くも吐き出したい欲求に脚をダンテの腰に巻きつけてぐいぐいとそれを押し付けた。
ダンテの指も奔放に俺の中で動き回る。
「あ、ちょっ……そこ、も……っ」
「ん? もうイきそうか? 指だけで?」
「うるさ……っ」
面白がるように動かしてはたまにいい所を突いてきて、でもすぐに見当はずれの方を弄られる。
俺がいいように動いてもわざとポイントを外されるから焦れったいなんてもんじゃない。
「ダ……テ、も、いい加減……ああぁっ、くぁ……!」
またふいにそこを擦られて背筋が痺れるほどの快感が脳天にまで駆け上ってきて身体が震える。
でもイけるまでのものじゃなかったのが余計に辛い。
せめてと互いの腹の間のものを擦って快感を得ようとしたがそれは呆気なく阻止されてしまった。
「おっと、自分でやるこたないだろう?」
自分のものにかけようとしてた手をぐいと引き上げられて無理やり背中に回される。
「ほら、落っこちないようにつかまってろよ」
「やだっ、も……っ、イきたい……ダンテ」
首筋に頬を擦り付けて頼むよと言うと指が増やされた。
2本だか3本だかもう分からないけど、その隙間から入り込む海水がやけに冷たくて俺は「ひっ」と喉を鳴らして仰け反った。
同時に内壁を余すところなく擦るような指の動きに腰のあたり全体に痛くなるほどの快感が突き上げてくる。
「あぁ! やっ、だ……あ、ふぁ……あぁっ」
もうどこがと言わず、中の触られてる場所全部が勝手にびくびくと震えていた。
「イけそうか? ん?」
「んっ、も……イきそ……もっと、強くして、もっと……」
いまひとつきっかけが掴めなくて、ぎりぎりになっている俺のをダンテの腹に擦り付けた。
同時に互いの身体の間にちゃぷちゃぷと小さな波が立って、目の前にあるはずのその音がやけに遠くから響いてくるもののようにぼんやりと頭の中に広がっていく。
「あぁ……んっ、イイ……ダンテ……っ!」
ぎゅっと両腕を回して抱きついて、周囲に遠慮がいらないのをいいことに俺は好き放題に声を上げていた。
弄られているそこだけが別の生き物みたいに思えるほど、俺の意思とは無関係に震えて咥えている指を締め付ける。
馬鹿みたいに喘ぐ自分自身に興奮して、もっともっとしてほしくて声を上げた。
「はぁっ、あ……あぁ! も、出そっ……くっ」
ほんとにもう限界。
そんな俺を煽るように後ろの指が一番やばいところを抉ってきた。
指先や曲げられた間接が一気に俺を押し上げる。
「あ、あ、や……ああぁっ……っ!」
ぞくりと鳥肌が立って太ももが痙攣した。
直後に襲ってくる感覚に全身が痺れて震える。
びくびくと勝手に動く身体はおっさんの指をぎゅっと食んで、それがまた気持ちよくて俺はただその首に額を擦り付けて喘ぐことしかできない。
自分の荒い息遣いと心臓の音が耳の内側にやたら大きく響いていた。
「ぁ……ダンテ……」
少しだけ落ち着いた俺の身体にはまだダンテの指が入っていて、それがまだゆっくりと動いているのが気持ちよくて仕方ない。
でもやっぱり欲しいのはダンテ自身なわけで。
一度出してしまえば身体も気持ちも昂ってどんなことだって言っちまえる。
「今度はこっちが欲しい」
俺のと同じように腹の間で擦られていたダンテのそれも今は十分に硬くなっていた。
その先端に指をかけてくりくりと弄ってやるとさすがにダンテの眉も少し歪む。
「なあ……」
一回だけじゃ到底物足りない俺のと一緒に強請るつもりで擦れば呆れたように小さく笑ってキスをしてくれた。
「ちょっと体勢変えるぞ、さすがにこれじゃ俺も動きづらいんでな」
どうやらダンテも乗ってきたみたいで、俺をぶら下げたまますいすいと岩場の方へ泳ぎだす。
少しうろうろしているとダンテ一人がなんとか腰を落ち着かせられそうな小さな岩の張り出しがあった。
どうせなら海から出ちまってもいいんだけどと思いつつ、でもこんなの滅多にできないことだしなと考えると未知への期待感に身体がまた興奮してくる。
海の中でなんて初めてだし、さっきも水の中にいたせいか身体がふわりと浮き上がる感じがしてすっごい気持ちよかったし……。
「ほら、あっち向け」
今度はダンテに背中を預ける格好で抱えなおされた。
尻に硬いものが当たるだけで焦れったくなって早く欲しいと腰を揺らす。
「お前はがつがつしすぎだな。少は楽しむってことを覚えたほうがいいんじゃないか、ん?」
乳首を摘まれて臍のあたりをくすぐられて耳朶を噛まれて、あちこちで生まれた痺れが指の先まで響いていく。
「しょうがないだろっ、我慢できな……うわっ」
ふいに起こった波のうねりに身体がさらわれそうになった。
「おっと」
ふわっと浮き上がって膝から離れていきそうになった俺をダンテががっしりと抱き込んで捕まえてくれる。
「なあ、上がった方がやりやすくないか?」
「いいじゃん、面白いよ。な?」
そう言って振り返ると呆れたように肩を竦めていた。
「せっかくこんな気持ちのいい場所にいるんだから。それに楽しめって今自分で言ったばっかりだろ」
「少し意味が違う気はするが……分かったよ」
「へへ……」
エッチのとき、けっこうダンテは俺を甘やかしてくれる。
呆れたような顔をしても結局は望むことをしてくれる。
それが心地よくて嬉しくて、俺の欲望は膨れていく一方だ。
けど、それをすっぽりとまるごと受け入れてしまうダンテはやっぱり大人なんだよなと、たまに少し寂しくなることもあるし悔しくなることもある。
「んっ」
いきなり胸の先がじんとしたから下を向いてみれば、見た目無骨な指先が乳首を摘んでは潰したり捏ねたりしていた。
すっかり膨れて紅くなっていて、指でされるのもいいけど舐めてほしいかもとかこの体勢では無茶なことを考えてしまう。
でも起用に動く指先が、さっきまでこれが俺の中にあったんだと、俺さえ知らない俺の中を知り尽くしているんだと思うと愛しくて愛しくて舐めまわしてやりたくなってきた。
なんだかもうほんとに……。
「はぁ……ん……」
耳や首筋にも舌が這い回って気持ちはいいけど、やっぱりどうしても物足りない。
こういう焦れったいのも嫌いじゃないがとにかく今は早く欲しくて堪らない。
「ダンテ……も、いれて……」
背後に当たるものに手を伸ばす。
それはもう準備万端といった感じで、その先端に指を当てればぬるりとしたものが感じられるけど一瞬で海水に溶けていってしまう。
あー、もしかしてこれは少し痛いかもとか考えていたら、いきなり脇の下に手を差し入れられて身体が少し持ち上がった。
「うわっ」
「ほら、欲しけりゃ自分でいれろ」
「ん……」
俺は浮いた自分の尻にダンテのそれを当てがった。
瞬間、水の中にいるせいか酷く熱く感じる先端にぞくりと身震いが起こる。
後ろを自分の指で開くようにして、もう片方で熱いダンテをそこに当てながら「いいよ、少し下ろして」と言ってみた。
案の定、ぬめりが足りないせいか上手くいかない。
「あ……っ」
それでもそこに当たってるっていうだけで気持ちよくて焦れったくて、つい腰を揺らしてしまう。
「あ、あ……んっ」
焦れる甘さが意外に良くて、何度も擦り付けるように腰を動かしているとどういうわけかいきなりダンテが突き上げてきた。
「あっ、ああぁ……っ!」
一気に入り込んできた熱に全身が緊張する。
「いきなり、……んだよっ!?」
「お前が一人で可愛い声出してるからだ。俺も混ぜろよ」
混ぜるもなにも。
無意識に力が入ってしまうそこはリアルにダンテの存在を感じ取る。
続けてゆっくりと入ってこようとするのを助けるように、俺は両手で自分の尻を開いてやった。
全てが収まったところでダンテは一つ息をつき、ぎゅっと俺を抱きしめてくる。
繋がった直後はいつもそうだ。
こうやってしばらく抱きしめてくれている。
『慣れるまで待っててやるよ』
初めてダンテを受け入れたときに言われた言葉がいつも頭を過ぎっていった。
苦しくて浅い息しかできなかった俺を落ち着かせようと抱きしめながら髪を梳いていたダンテ。
けっこう慣れてしまった今でさえ、決まってダンテは抱きしめて髪を梳いてくれる。
すっげえ好きだと、心底思う。
身体に回されてる腕をぎゅっと抱きしめて二の腕あたりにキスをした。
が、その瞬間。
「んぁ……っ」
波にさらわれそうになった身体が動いたせいで、ふいにいい所を突かれる格好になる。
「くっ……」
抱きしめられていい気分になっていたせいか少し緩んでいた俺の身体は一気にダンテを締め付けて震え始めた。
この辺は周囲にある岩が不規則に並んでいるせいか、時々不意打ちのようなうねりがくるらしい。
おかげで少し落ち着きかけていた欲も今の刺激ですっかり復活してしまった。
波に持っていかれないようにダンテの腕を抱いたままゆっくりと腰を前後に動かしてみる。
「ん……ぁ……」
途端にそこから生まれるむず痒さに深いため息が出た。
そのまま好きなように動いていれば、そんなむず痒さも快感に変わってまた俺の中は勝手に動き出し背筋を粟立たせる。
「いい感じか?」
耳元で囁かれるのがひどくくすぐったい。
「ん、気持ちいい……、あんたも感じる?」
「ああ、中がすげえひくついてる」
「だろうね」
意識してるわけじゃない、きっと身体が覚えてしまってるんだ。
こうすればダンテはもっともっと気持ちいいことをしてくれると。
それに俺が感じる分だけ感じさせてやりたいといつも思うけど、実際どうなんだ?
まあだいたいいつも途中から俺がわけ分からなくなって気づいてないだけかもしれないけど、さすがに最後の瞬間以外はやけに余裕ある態度なんだよな。
「くっ、あ、あぁ……」
少し動きを激しくしてみれば余計に感じて声を出すのは俺の方で、ダンテはやっぱりのんびりと俺の耳を舐めたり抱きしめていた片方の腕を外して腹のあたりを撫で回したりしている。
「ほら、頑張って動けよ」
「ふぁ……っ!」
繋がっているその場所をいきなり指先が撫でていった。
めいっぱいに開いているそこをくすぐるように弄られるとぞくぞくするものが背筋を這い登ってくる。
「あ、それイイ……、もっと強く……」
そこを指に擦り付けるように腰を動かすとまさに甘い痺れが全身へと広がっていく。
擦ったり押したり時には中にまで入り込んでくる指が気持ちよすぎて声も身体も止まらない。
「ダンテ、ダンテっ……あぁ、はぁ……んっ、イイ……」
本当はもっと滅茶苦茶に腰を動かして感じたいけど、どうにもこの不安定な体勢だとそれもできない。
焦れったさが募っていくだけだ。
「前、前……触って……」
「ん? こっちはもういいのか?」
ぐいと入り口あたりを押されて身体が跳ねる。
「あぁ! や、そこも……」
「無茶言うな」
分かってる、片手は俺を抱きとめてるから前と後ろ同時になんて無理だ。
それでも触って欲しい。
そう思うと自然と俺の手が自分のものに伸びた。
ゆっくりと包んで先端を親指で擦る。
「あ……っ」
一度始めてしまえばもう止まらない。
手を動かしながら先端を弄って腰を揺する。
「いやらしいな……けど、これはなしだ」
言葉と一緒に耳の中に舌を差し込まれて全身が震えた。
同時に前にあった俺の手を掴まれて腕と一緒に抱きこまれる。
「やっ、なんで……はうっ、も、やだ……」
上り詰める手段を奪われて子どもみたいにダンテの腕の中で身をよじった。
この体勢で俺が動いてるだけではどうしても物足りない。
波に煽られる身体は不安定に揺れて不意の快感をつれてくるけど、それがまた中途半端に焦れったくて余計に辛くなるだけだった。
ダンテの腕にしがみついて必死に腰を振ってみてもなかなか一線を越えられない身体には一方的に快感が溜まっていく。
吐き出したくて仕方ないのにできない。
「ダンテ、ダンテ! もっと、強くして……っ、はぁ……イきたい……」
「お前、後ろだけで……イけるだろ、ん?」
ダンテの声もかなり上ずっていた。
耳元にかかる息が熱い。
「できな……っ、も、やっ、前さわって……ダンテ、頼むよ」
出口のない熱は苦しいほどにぐるぐると腰の回りにまとわりついて俺を喘がせる。
抑えられた腕を振りほどこうとしても全く無駄で、それどころかもうほとんど抗うほどの力が入らなくなっていた。
俺は自分のものに手を伸ばしたくて必死にもがいているつもりでも、ダンテから見ればそれは赤ん坊がむずかっている程度のものなのかもしれない。
「ダンテ……、もう、やぁ……」
頬にいつの間にか流れた涙が熱かった。
ダンテの腕の中でひらすら身をよじって懇願する。
「イかせてよ……くるし……っ、あぁ、んっ」
イきたくて、イきたくて、もうそれしか頭になくて、それなのに悪戯をするように波が気まぐれに俺を揺らしてはまた果てる一歩手前の快感を湧き上がらせる。
潮風のせいか海水が口に入り込んでいたのか、喉がひりひりしてきて喘ぐ声も掠れてきた。
「そんなにイきたいか?」
「ひ……っ!」
いきなり耳朶を噛まれて全身が跳ね上がった。
それだけなのにとんでもない快感が背筋を駆け抜けて指先が痛いほどに痺れる。
「イきたい……も、あぁっ! んぁ……はうっっ」
「だったら、俺の言うこと一つ。なんでも聞くか?」
「聞く、聞くから! なんでも……っ」
とくにかく吐き出すことが最優先だった。
他はもうどうでもいい。
「あああぁっ……ひぃっ! あっ、あっ、あ……っ!」
ふいに抱き込まれていた腕が緩んだかと思うとそれは俺の腰に当てられていた。
「つかまってろよ」
言うと同時に俺の身体はダンテの手で思いきり上下させられる。
「あぁぁー! ダンテ、ダンテ! ぐぅ……んぁっ」
引き抜かれそうになってはまた最奥まで一気に詰められて、かと思うとぐりぐりと腰を回すように動かされて、不安定な体勢のままの俺だけでは到底できなかった激しい交わりに閉じた目の奥にちかちかと小さな光がいくつも明滅した。
「すごっ、ああっ……やぁ! も、もっと……もっと!」
「まだ……頑張るのか……くっ」
「イイ! すごくイイっ……はぁ……そこ、イきそ……」
腰を掴むダンテの手をぎゅっと握り締めて、俺は一緒になって腰を振った。
意識は繋がっているそこだけに集中して、そのあまりの快感に自分の前を弄ろうなんてことも忘れていた。
突き上げられて自分で振って、ダンテの熱が俺の中で暴れまわっている。
その熱さに全身が焼かれていくようだった。
「も、イくっ! あーっ、だめ……でるっ!」
「イけよ……、ほら!」
「はっ、あ、あ……あああぁーっ!」
一際大きく強く突かれて痛いほどの痺れが俺のものを襲った。
直後、まさに大きく弾けたような快感が身体を貫いていく。
「や、やだ……あっ、ん……っ」
勝手に動いてしまう俺の中がダンテに絡みつくようにうねっているのが分かった。
震えてぎゅうぎゅうと締め付けて、でもそれが別の快感になって俺に返ってくる。
「止まらない、ダンテ……ねぇ、や……なに、これ……」
いつまでも収まらない快感に戸惑った。
身体が全くいうことを聞かない。
そこだけが別に意思を持っているようにダンテから快感を貪っている。
「堪んねぇな……くっ、ん……っ」
激しくなったダンテの息遣いが耳元に熱い吐息を撒き散らす。
「最高だ」
ちゅ、と派手な音を立てて耳朶にキスをされたかと思うと、またダンテは俺の腰を掴んで大きく揺すり始めた。
「今度は……俺の番だろ」
「あぁ! や……ひっ!」
昂ぶったままのそこをまた突かれて思わず悲鳴が漏れた。
もう自分でもどうなっているのか分からなくなってくる。
きっと俺の中のどこかが焼き切れて壊れたかしたんじゃないかと思う。
ただただダンテに揺すられて突かれて自分でも腰を振って、身体の全部が快感の中にどろどろに溶けていってしまうようなそんな気がしていた。
なんとなく背中が痛かった。
あちこちに何か硬いものが当たっている感じですごく不快だ。
目を開けて、最初に薄っすらと視界に入ってきたのは暗闇の中のダンテの寝顔だった。
今にも鼻がくっつきそうなほど近くにそれがあって、俺は二、三度瞬きして今の状況を考えてみる。
が、少し混乱していた。
なんとなく半身を起こしてみると、星の綺麗な夜空と波の音に気がつく。
あー、海だ。
海……。
「あーっ!」
途端に俺はここに辿り着いたこととその後のことを思い出した。
「なんだぁ?」
俺の声で目が覚めたらしいダンテがのそりと起き上がってきた。
「なんでこんなとこで寝てんだよ? 野宿か? なんで夜!?」
最後の記憶は眩しいほどの昼間だったはずだ。
それがなんだっていきなり夜で、しかもここで寝てたりするのかわけが分からない。
「なんでって……」
呆れたような溜息をつきながらダンテは俺の髪をわしわしと掴んできた。
そうしてじっと俺の目を見つめながらにやりと笑う。
「お前が可愛い声で『もっともっとぉ〜』って言うからおじさん頑張っちゃったんだぞ? 自分で何回イったか覚えてないのか? 『もっとしてぇ〜』なんて迫ってくるからおじさんもつい……」
「ちょ……っ、待った!」
聞いてる方が恥ずかしい「俺の可愛い物まね」にストップをかけてなんとか記憶を辿ろうとしたけど、どうにも海の中以降があやふやで思い出せない。
でも確かにそんな感じがしないでもないし。
海から上がってダンテの上に跨ってたり圧し掛かられてたりした光景も、なんとなく薄っすらと覚えているようないないような。
それに身体のだるさもこれまでにないほど尋常じゃないというかなんというか……。
「思い出したか?」
「……なんとなく。で、俺寝ちまったの?」
「というか、失神?」
「…………」
もう何も聞かない方がいいかもしれない。
俺は一気に疲れを感じてまた横になろうとした。
そうして初めて身体の下に何かが敷いてあることに気づく。
幸いなことに半分悪魔の俺たちは夜目がひどく効くんだ。
下にあったのはダンテと俺のコートだった。
背中が痛いはずだ、これだけでベッドの代わりにするのは到底無理だ。
さらにもう一つ気づく。
俺はダンテのシャツを羽織らされていた。
さすがにでかい。
これはあれか? いわゆる男のロマン?
俺、『ダンテのシャツ、おっきぃ』とか言った方がいいのか?
「あっははっ、ありえねー」
つい想像しちまって笑いを堪えられなくなった俺にダンテはヘンなものを見るような生ぬるい視線を向けてくる。
さすがにそんなこと言うつもりはないから、なんでもないなんでもないと手を振りながらゆっくりと横になった。
収まらない笑いを押し込むように深呼吸してから仰向けに夜空を見上げてみる。
街じゃ絶対に見られないような、まさに満天の星空が広がっていた。
「すげぇ」
空とか太陽とか星とか、なんだかそういうのを見ると無意識に手を伸ばしたくなってくる。
と、ふいに黒い影が落ちてきたと思ったらダンテが顔を寄せて軽くキスをしてきた。
本当に触れるだけのキスを数回。
たったそれだけなのに、ありえないくらい胸が痛くなってきた。
少し離れたダンテの顔を見上げると、これもまたとんでもなくありえないくらい優しげな、でも少しだけ切ないような目で見つめてくる。
たまに、ほんとにたまにだけどダンテはこんな顔をすることがあって、どんな想いで俺の顔を見てやがるんだと文句を言いたくなることがあった。
なんだよ、と言いたかったけど、多分、今何か言ったらさっきから熱くなってきてる目頭が何かしらの行動を起こしそうで怖かった。
それを堪えるように何度か瞬きをしてダンテの視線から逃れるように抱きつく。
俺がシャツを取っちまったからダンテは半身裸で、羽織ってただけのシャツも抱きついた拍子に落ちてしまったから俺も半身裸で。
そんな格好でキスをしているのに昼間みたいな欲求が湧いてこないのは、さっきやりすぎたからかあまりに優しい顔をされて感傷的になったからなのか。
とりあえず気持ちいいことに変わりはないから、俺はダンテを押し倒してその胸に頭を乗せて目を閉じた。
海からの涼しい風が通り過ぎていくのと波の音と心臓の音が俺を思いきり甘やかしてくれてるみたいだ。
寝てしまうのがもったいないくらいの夜だなと思うけど、多分そんなに起きてはいられない。
全てのものがあまりに心地よすぎて意識も身体もその中に溶けていってしまいそうだ。
そうしてうとうとする俺の髪が揺れていたように感じたのは風のせいじゃなくてダンテの指が通っていたからだとなんとなく気づいて、ダンテと呼びたかったけどもう声は出なかった。
今なら想ってること全部素直に言えそうなのにと、言いたいことを心の中に浮かべていく。
でもきっとどれも言えないまま、また明日になっちまうんだろうけど。
だけど。
「また……」
来てもいいかもな、仕事抜きで。
それだけ言って俺は気持ちよく寝入ることにした。
2009/09/11
2010/07/29 ちょっと書き直し
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