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一瞬、薄暗い通路に青白い光が走った。
それを目の端に捉えたダンテは足を止めて息を詰める。
背中のアラストルが僅かな電撃を帯び始めるのにやや遅れて、ダンテの本能も悪魔の放つ邪な気配を感じ取った。
まだ少し間がある。
ゆっくりと振り返れば十数歩離れた先に細い稲妻が集まり始めていた。
その悪魔が形を成していくのを見つめながらダンテはちっ、と舌打ちをする。
「分裂さえしなきゃ易い相手だがな」
ずっと握り続けていた銃をホルスターに収め背中の愛剣に手を伸ばす。
「ここはさっさとやっちまおうぜ、相棒」
そうしてアラストルが背中から離れた瞬間、青白い光を纏った人型が出来上がりいきなり電撃を浴びせかけてきた。
「はっ」
一度戦った相手ならその初動は大抵見切れる。
右足で思いきり地を蹴ったダンテの、たった今いたその場所に稲妻が走り石造りの地面を焼け焦がした。
勢いで一回転したダンテは即座に体勢を立て直し、悪魔の放電がなくなっているのを確認すると再度強いステップで一気に間合いを詰める。
そのまま突きだしたアラストルで似非人間のど真ん中を突くつもりだったが、僅かの差で避けた悪魔はふわりと空中に浮き上がるとその姿を蝙蝠に変えてしまった。
右に左に鋭く飛ぶ蝙蝠を剣で捉えるのは容易ではない。
ふん、と忌々しげに鼻をならしたダンテは剣を手にしたままショットガンを構えた。
普通なら片手で扱えるような代物ではないそれをダンテは易々と連射していく。
が、相手も空中戦は得意らしく散弾を器用に避けては鋭い電撃を放ち始めた。
狭い通路に銃の轟音と稲妻のばりばりという音が響き渡る。
どうにも手ごたえの感じられない攻撃にこのままでは埒が明かないと判断したダンテは、稲妻を避けながら蝙蝠の数歩先まで近づき一気に体勢を低くした。
蝙蝠の真上にジャンプをしてアラストルを振り下ろそうとしたのだ。
が、僅かに崩れた石の窪みがダンテの足を取りバランスを崩させる。
「な……っ」
思わずよろめいたダンテの隙を見逃すはずのない悪魔は一瞬で人型に戻り回し蹴りを仕掛けてきた。
倒れかけたダンテは寸でのところで一気に身を沈め蹴りを避けたが、悪魔の足先が僅かに髪を掠めジジっと耳障りな音を立てる。
「ちっ」
髪の焼ける不快な臭いを嗅ぎながら、それでもそのまま手をつき完全に倒れ込むのを堪え同時に足払いを仕掛けた。
決まったはずの蹴りが外れた悪魔はまんまと足を取られ倒れ込む。
すかさずぎゅっとアラストルの柄を握りしめたダンテはそれを下から一気に振り上げ足元の悪魔を宙空に放りあげた。
また蝙蝠に化けられないようショットガンを数発ぶち込みながら落ちてくる人型に鋭い突きを一つ見舞う。
それに飛ばされかけた悪魔を、ダンテは逃がすかとばかりに再度斬り上げ落ちてきたところを斬り伏せ地に叩きつけた。
そのまま背中に剣を突きさし止めを刺す。
と、まばゆいばかりに放電を始めた死に際の攻撃を軽いステップで避けながら、ダンテはひゅっと口笛を鳴らした。
やがて強烈な光は弱まりその実体を薄めていく。
その様子を離れた場所で見つめながらダンテは手にした愛剣に唇を落とした。
「格が違うってもんだぜ。な、相棒」
そんな言葉に応えるかのように僅かな光を帯びたアラストルを背に戻す頃、弱まった悪魔の光は完全に消え失せ周囲は再び薄暗い幕に覆われていた。
2009/08/23
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