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大和祐大の「祐」の字は「ネ(しめすへん)」に「右」と書く。 時々「しめすへん」と言っても相手に通じないことがあるので、そういうときは「カタカナのネ」と言っている。 ごくごく稀に「しめすへん」と聞いて「あ、はいはい」と言いながら「ころもへん」を書かれてしまい、こんな字はないだろうという字にされることもあったり。 大和は自分の名前を間違えられることに少々敏感になっていた。 ことの発端は小学校の卒業式。
「大和祐大くん」 『大和裕大』 ―― 違ってる……。
その卒業証書の大和の名前は間違えられていた。
この1枚の紙が6年間の自分の生活を代弁してくれる大事なものであることくらいは大和にも分かる。
―― じゃあ、ぼくの6年間はどうなるの? 目の前の校長を睨んでみるが、校長はただのほほんとしているだけだ。
―― なかったことにされるのか、ぼくの6年間は……。
以上のようなことを手を伸ばして卒業証書の端をつかむまでの僅かの間に考えていた大和だったが、まさか大勢の児童・父兄・教職員・来賓の前で苦情を申し立てるわけにもいかず。
しかしこの時の彼には、まさか成人してから後、イヤになるほど「しめすへんに右」「カタカナのネ」と言わされるハメになろうとは想像もしていなかったのである。
(7.8.2003)
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